パンのかけらとちいさなあくま

 悪魔は悪いことをするのが当然で、魔法を使い、ものすごい力を持っているー。こんなイメージはありませんか?この絵本に登場する小さな悪魔は、〝偉大な悪魔〟になるために、修行中の身といったところでしょうか。
 小さな悪魔がパンのかけらを盗みました。パンは貧乏なきこりの大切な昼ご飯でした。小さな悪魔が、得意になって大きな悪魔に知らせに行くと、何ということでしょう。大きな悪魔たちは叱るのです。「なんてやつだ」「許してもらうまで帰ってくるな」
 小さな悪魔は貧乏なきこりのために、自分の持つ力を最大限に使ってお詫びをします。悪魔がきこりのために健気に頑張る姿はとてもいじらしく、それを邪魔する地主とのやりとりは痛快です。
 リトアニアの昔話が基になっています。悪魔や地主の愉快なキャラクターはもちろん、深い森や沼地、黄金色の麦畑などの風景も、とても魅力的に描かれています。

三浦恵里子(秋田市寺内保育所)

▶お父さん・お母さんへの内緒話
 もし小さな悪魔がパンのかけらを大きな悪魔に見せなかったら。大きな悪魔が叱らずに「よくやった!」とほめていたら。小さな悪魔は、どんな大人になるのでしょうか。この絵本を読むと、「悪いことって何だろう」「大人はどんな言葉や態度を伝えればいいのだろう」と考えたくなることでしょう。でも悩ましいことは置いておいて、シンプルに絵本を楽しんでください。

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対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 内田 莉莎子/再話 堀内 誠一/画
出版社 福音館書店