どうぞのいす

 ウサギさんが小さな木の椅子を作りました。この椅子に腰掛けてもらい、みんなにゆっくり休んでもらおうと思ったのです。椅子には小さな尻尾を付けました。
 ウサギさんは、この椅子を涼しい木陰のある大きな木の下に置き、誰でも自由に座って休めるように立て札を立てました。その立て札には「どうぞのいす」と書きました。
 最初に木陰にやってきたのは、ロバさん。拾ったドングリを背負ったかごいっぱい入れています。ロバさんは疲れていたので、「よっこらしょ」とかごを椅子の上に下ろし、自分は木の幹に寄りかかって昼寝を始めました。
 そこへ腹ぺこのクマさんがやってきました。椅子の上のかごには、大好きなドングリがたくさん。そばの立て札には「どうぞのいす」と書かれています。クマさんはどんぐりを全部むしゃむしゃと食べてしまい、「からっぽのままでは後の人におきのどく」と言って、持っていたはちみつの瓶をかごに入れ、立ち去りました。
 次にキツネさんが来て、リスさんが来てー。ロバさんが目を覚ましたら、どうなっているのでしょうか。

金田昭三(児童文化研究家)

▶お父さん・お母さんへの内緒話
 「どうぞのいす」が起こす楽しい出来事の繰り返しに、子どもたちは笑顔になることでしょう。同じ作者がタッグを組んだ「ごろり ごろん ころろろろ」は、ウサギさんがテーブルを作るお話です。これも楽しい絵本ですので、ぜひ読んでみてください。
 

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対象年齢 3歳ぐらいから
作者名等 香山 美子/作 柿本 幸道/絵
出版社 ひさかたチャイルド