キャベツくん

 絵本の世界では、動物や物が主人公になり、まるで人間のように振る舞うことがあります。長新太さんの絵本となると、さらに自由な世界が広がります。
 さて今回紹介する絵本には「キャベツくん」と「ブタヤマさん」が登場します。「こんにちは」と挨拶するキャベツくんに対して、ブタヤマさんは「キャベツ、おまえを食べる!」。最初からなんともすごい展開です。
 キャベツくんは慌てて逃げるのかと思いきや、「ぼくを食べるとキャベツになるよ!」。次の瞬間、鼻がキャベツになったブタヤマさんが空に浮かんでいるではありませんか。
 お話の展開に「どうして?」と疑問を持ってはいけません。長新太ワールドでは、とにかく、そうなのです。ブタヤマさんはキャベツくんに「カエルがキャベツを食べたら?」「ゴリラは?」「ライオンは?」と疑問をぶつけます。すると、空にそれぞれキャベツになった動物たちが浮かびます。
 読み聞かせの際、子どもたちは最初はぽかんとした様子ですが、だんだん楽しそうに笑い始め、やがて笑い崩れて大騒ぎになります。読み手もついつい力が入って、余計に面白さが増していく、そんな絵本です。

 遠藤美弥子(おはなしの会「おはなしの扉」)

▶お父さん・お母さんへの内緒話
 大人は「分かること」にこだわりがちですが、子どもたちは自由に楽しむのがとても上手です。「どこが面白いのか分からない」などと思わずに、子どもの笑い声に楽しみながら読んであげてください。

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対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 長 新太/文・絵
出版社 文研出版