あげます。

 妹ができて、図らずもお兄ちゃんになってしまった男の子の切実なお話です。
 しわくちゃで髪の毛がない「へんなの」が家にやって来た日から、ママもパパも、おばあちゃんもおじいちゃんも、僕のことなんか知らん顔。僕が何をしても振り向いてくれない背中人間に変わってしまいました。
 面白くない僕は「へんなのを子猫みたいに誰かにあげちゃおう」と考えます。似顔絵を描き、「へんなのあげます」というチラシを作って貼り出します。でも友だちに「へんなのなんていらなーい」と言われてしまいました。
 かわいい笑顔の絵を描いてみたり、金髪ふさふさの髪の毛を作ってみたりしましたが、もらってくれる人はなかなか現れません。そこで僕は、とっておきの作戦を思いつきます。成功すればきっと誰かがもらってくれるに違いありません。その日から毎日、僕と「へんなの」の特訓が始まりました。
 妹ができるという衝撃の事件に立ち向かう男の子の奮闘ぶりがほほ笑ましい絵本です。

 鈴木千春(秋田市中央図書館明徳館)

▶お父さん・お母さんへの内緒話
 両親や祖父母の愛情を独り占めしていた男の子にとって、後からやって来て注目を浴びる妹は、自分の立場を脅かす存在に思えてしまうのかもしれません。何とかしようと一生懸命行動しているうちに、いつの間にか頼れるお兄ちゃんになっていたみたいです。お母さんもお父さんも、その様子をちゃんと見ていて、認めてくれているのがうれしいですね。

2016マザーズタッチ文庫へ進む

対象年齢 3歳ぐらいから
作者名等 浜田 桂子/作
出版社 ポプラ社