主人公の「おさじさん」は、スプーンです。コロンと丸い顔につぶらな瞳、スマートな赤い柄に小さな手足で、愛らしい姿をしています。「おいしいものはありませんか」「お口に運んであげますよ」と言いながら、いい匂いのする方向に大急ぎで向かいます。
その先にいたのはウサギの坊や。いい匂いは、とろとろ煮えた卵入りのおかゆでした。ところが坊やは、「ぼく、ひとりで食べるよ」と言っておさじさんの手伝いを断ってしまいます。
おさじさんは、小さい子がおいしいものを食べるときの強い味方です。おさじさんがいれば熱いものだって平気。「ふーふー」して食べれば、お口もほっぺも幸せいっぱい。ウサギの坊やも最後はおさじさんに手伝ってもらい、上手に食べられてにっこりです。
柔らかな絵と語りかけるような文で、優しさと愛情をいっぱい感じられるこの作品は、松谷みよ子さんの「あかちゃんの本」シリーズの一冊です。このシリーズは、「いないいないばあ」など名作ぞろい。どれも世代を超えてたくさんの親子に楽しまれています。
田丸 美穂(秋田県子ども読書支援センター)
▶お父さん・お母さんへの内緒話
自分で食べることに興味を持ち始めた子どもの食事の世話は、成長の喜びを感じる反面、とても大変ですね。そんなときにお薦めなのがこの絵本。おさじさんが、上手にごはんを食べるきっかけづくりを手伝ってくれるかもしれませんよ。
対象年齢 | 赤ちゃんから(0歳~ ) |
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作者名等 | 松谷みよ子/文 東光寺啓/絵 |
出版社 | 童心社 |