ハサミムシのおやこ

 ハサミムシは体長約2センチの小さな黒い虫です。この虫は子育てのために命をささげます。その過酷な子育ての一部始終を見せてくれる写真絵本を紹介します。
 春まだ早いころ、ハサミムシの雌はつやつやした美しい卵を産み、その卵を休みなく世話します。ひっきりなしに向きを変え空気に当てないと、卵はかびて死んでしまうのです。卵がかえると、雌は幼虫が巣から出ないよう動き回り、自分の体の近くに幼虫を集めます。幼虫を狙う敵が来ると、お尻のハサミを掲げて威嚇します。
 やがて大きくなった幼虫は雌の身体に群がり始めます。幼虫は雌を食べるのです。雌の体は固い部分だけを残してすっかり食べ尽くされ、幼虫は外の世界へ散り散りに巣立っていきます。そして成長し次の卵を産むのです。
 天敵は少ないけれど、エサも少ない春の始めに繁殖するハサミムシ。そのために雌は自分の体の養分を全て幼虫に与えて命を終えるのです。どんな生物も大自然の中、世代をつなぐために戦っています。全力を掛けたハサミムシの子育てをどうぞご覧ください。

    解説:遠藤美弥子(おはなしの会「おはなしの扉」)

▶お父さん・お母さんへの内緒話
 ハサミムシの雌は食べられながらもなお、命尽きるまで幼虫を守るように巣で動きまわっているそうです。こんな小さな虫が、こんなにすごい子育てをしているとは。虫が苦手な私でも、ハサミムシを見つけたくなります。
 【2015年 マザーズタッチ文庫】
  遠藤 美弥子 (おはなしの会「おはなしの扉」)
 

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対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 皆越ようせい/写真・文
出版社 ポプラ社