ひらがなだいぼうけん

 この物語の主人公は、本の中の平仮名たち。彼らは夜中になるとおしゃべりをしたり、本から飛び出したりするのです。さて、私たちの知らない所で何をしているのでしょう。
 話し始めたのは「は」の文字です。「ハ」と呼ばれたり「ワ」と呼ばれたり忙しく、出番の少ない文字たちがうらやましいと言います。それを聞いたほかの文字たちは、そんな言い方は失礼だと怒りだしました。
 「が」は、自分が入ろうとしたところに「は」がでしゃばるのだと抗議します。言い争いがエスカレートして平仮名たちは大混乱。「き」の横棒が一本外れて「さ」になり、本物の「さ」は驚きの余りくるりと回って「ち」になってしまいます。「く」は自分が「く」なのか、「へ」なのか、上下左右が分からなくなりました。ふんわりしたカーブが自慢の「れ」は、そろってつぶれ全く見分けがつきません。
 結末は、夜明けに「は」が謝り、みんな元通りに本のページに落ち着きます。平仮名の面白さが詰まったこの本は、文字を使うことに慣れてきた子どもたちにお薦めです。

  解説:柴田麻衣子(横手市図書館課)
 
▶お父さん・お母さんへの内緒話
 この本には3編のお話が収められています。左右が逆の鏡文字など、文字を書き始めた子どもたちが共感できる題材ばかり。擬人化された平仮名が語ることで、文字の性格まで見えてくるようで不思議です。

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対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 宮下すずか/作 みやざきひろかず/絵
出版社 偕成社