うらしまたろう

 多くの人が幼いころから親しんできた昔話が、2016年に本格的な文章を採用した絵本となって出版されました。多色刷り版画で彩られた挿絵は、時に緻密に、時に躍動感たっぷりに人物の表情、海の中の生き物を描き出し、思わず見入ってしまう魅力があります。
 「うらしまたろう」という若者が、子どもにいじめられていたカメを助けると、恩返しに竜宮城に案内されました。竜宮城では、乙姫さまがごちそうをふるまってくれました。
 次々と開けた戸の先には、美しく咲く花々やにぎやかな祭りなど、うらしまたろうを引きつける風景が広がっているのでした。時間を忘れて楽しんだうらしまたろうが、引き留める乙姫さまに別れを告げると、玉手箱を手渡されます。
 定番の昔話でも、地域によってストーリーが異なることがあります。鳥取県で語り継がれていた「浦島太郎」をもとに再話された本作は、最後にツルになったうらしまたろうと、カメになった乙姫さまが天竺に昇り幸せになるという物語。手をつなぐふたりの姿に、ツルとカメが重なるすてきなラストシーンが用意されています。

柴田麻衣子(横手市図書館課)

2017マザーズタッチ文庫へ進む

対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 おざわ としお/再話 かないだ えつこ/絵
出版社 くもん出版