やさいさん

 小ぶりな割りにずっしり重い絵本です。その秘密は、この絵本に、脅威の仕掛けが隠されているからです。
 表紙には、読み手を見つめているにんじんが表紙いっぱいに描かれています。そして、ページをめくると「はたけにやってきました」と物語が始まります。
 ところが、次のページに野菜の姿はありません。地面からにょっきりと生えた葉っぱだけです。でもよく見ると、地面すれすれに赤いものが見えます。「ははーん」とページを「上に」めくると、「すっぽーん」と飛び出すのは、表紙のにんじんです。
 子どもの絵本と侮るなかれ、見慣れた野菜も葉っぱだけでは分からず、大抵の大人は頭を抱えます。時々、野菜じゃないものも飛び出したり、おなじみの野菜に出会ってほっとしたり…。最後の大物を収穫する頃には、大人も子どもも心から満足していること間違いなしです。

 図鑑のように正確な野菜たちの絵。最初から最後まで地面の位置は変わらず、読み進むと野菜畑の広がりを感じます。ページを折っただけの単純な仕掛けで壊れにくく、子どもが自分でめくっても楽しめます。
 
遠藤美弥子(おはなしの会「おはなしの扉」)

2017マザーズタッチ文庫へ進む

対象年齢 3歳ぐらいから
作者名等 tupera tupera/作
出版社 学研プラス