ゆきしろとばらあか

 時を経ても色あせない、グリム童話の一つです。
 物語の主役は2人の美しい少女「ゆきしろ」と「ばらあか」。2人は小さな家にお母さんと暮らしています。貧しくても明るく、お手伝いにも励んでいました。
 ある雪の夜、少女たちの家に大きなクマがやってきます。外は寒いので火にあたりたいとクマは言います。少女たちは最初、クマを怖がっていましたが、だんだん仲良くなり、冬の間中クマと楽しく過ごしました。ところが春になると、クマは「もう、さよならをしなければならないよ」と去ってしまったのです。
 突然の別れを悲しんだ少女たちですが、その後しばらくしてクマと再会します。そこには、おとぎ話ならではの幸せな展開が用意されているのです。
 童話の雰囲気にぴったりの挿絵もすてきです。特にバラの花に注目してください。ばらあかが、お母さんの寝室に飾る一輪の赤いバラ。クマとのお別れの場面で庭に芽吹く2本のバラの木。じゅうたんのバラ模様。小さいけれど象徴的な花が、物語の世界を一層豊かなものにしてくれます。

柴田麻衣子(横手市図書館課)

▶お父さん・お母さんへの内緒話
 お話の中で、お母さんが「どちらかがひとりで持っているものは、どんなものでも分けてあげるのですよ」と声を掛けたり、寒がるクマを暖炉の近くへ導いたりする場面があります。少女たちの優しさと素直さに、母親の影響を感じます。親としての目線で物語に向き合うと、また違った味わいが感じられます。

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対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 那須田 淳/訳 北見 葉胡/絵
出版社 岩崎書店