地域の祈りが山へと届く
国道108号から由利本荘市笹子(じねご)地域の商店街に入って間もなく、左手に見えてくるのが月山(がっさん)神社です。
神社の屋根の上に視点を移すと月山神社の奥宮がある「月山」が見えます。笹子地域のシンボルとして親しまれてきた山で、里宮が笹子地域の「町(地域名が「まち」)」にあります。
毎年旧暦の8月1日(八朔)に近い9月の第一土曜・日曜日が、月山神社の祭典となっています。宵宮の幕開けは、午後五時半ごろから始まる長持行列です。お囃子と踊りの行列が、宿(やど)となった家の前で演奏を始めます。そのころ、別の宿では、長持ちを持つ若者たちがたすきを掛け、ケンダイと呼ばれる腰簑をつけてお祓いを受けます。
お祓いが終わると若者たちが宿となった家から掛け声とともに飛び出し、お囃子と長持ちが合流して、いよいよ神社までの行列が始まります。演奏される曲は「サイサイ」「剣囃子」「狐囃子」「秋田音頭」の4曲。長持には、奉納する品物を書いた札と福俵が載せられています。
行列でまず目を引くのが、真っ赤な踊り手の衣装。ほの暗い夕闇の中、鮮やかな紅の単衣(ひとえ)に黒い帯を締めた踊り手たちが、お囃子に合わせて優雅に踊ります。そしてもう一つの見ものが長持ち行列の先頭。お囃子に合わせて若者たちが歌い、そして「御用だ!」と叫びながら激しく手に持つ札と杖を打ち合わせます。
長持行列が到着するころ、神社の境内では演芸奉納が始まります。トップを切って演じられるのが、天神の「天神あやとり」。晴れの舞台に、手だれの保存会の方々が早技を繰り出します。その後、夜遅くまで演芸が行われ、宵宮の夜は更けて行きます。
明けて次の日には、お神輿、鼓笛パレード、番楽など昼間の行事がメインとなります。本宮では、秋葉神社からの子ども神輿行列が町内を練り歩きます。神社では、神事が執り行われ、その後、笹子地域の「天池番楽」の奉納も行われます。
今ではすっかり少なくなった大きな舞台を作ってのお祭りが、ここ笹子地域では、今も大切に行事が受け継がれています。
平成22(2010)年12月掲載
【関連リンク】産地直送ブログ
→由利本荘市上笹子地域の月山神社祭典宵宮・前編(2019年9月掲載)
→由利本荘市上笹子地域の月山神社祭典宵宮・後編(2019年9月掲載)
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