画像:大漁祈願に御利益 安全寺の「アミダ様」

 男鹿市安全寺(あんぜんじ)地域にあるお寺「十王堂(じゅうおうどう)」には古くから仏様が祀られています。その仏様が祀られているお堂は「阿弥陀(あみだ)堂」と呼ばれ、中には阿弥陀様、観音様、地蔵大士様の三尊像が祀られています。地域の皆さんは、三尊像を「アミダ様」と呼び、大切に祀っています。阿弥陀堂の扉は行事が行われる時にしか開けることは許されず、その姿を拝むことが出来るのは年に一度だけです。

 元々、アミダ様があったのは安全寺地域ではなく南西約3㎞にある「御岳山(みたけさん)」という真山と本山の間にある山で、その場所からは海がよく見え、近辺ではアミダ様がいたずらで船を「止める」ことで有名でした。
 
 ある時、その近辺にいた漁師たちが山の中で光るアミダ様を発見し、アミダ様の存在が知られるようになりました。それから、漁師たちがアミダ様を祀るようになりましたが、船を止めるいたずらが収まることはありませんでした。しかし、安全寺地域で祀るようになってからはいたずらがピタリと止まったと言います。
 
安全寺地域へ祀られることとなった経緯について、口伝では、いくら祀ってもアミダ様のいたずらが止まず、ほとほと困り果てた漁師たちが、アミダ様に「どこに行きたいんだ?」と聞いたところ、「安全寺に行きたい」と示したため、安全寺地域までアミダ様を背負ってお連れした……と伝わっています。それからはアミダ様が船にいたずらをすることは無くなり、漁に御利益がある仏様として知られるようになりました。当時、アミダ様がご開帳する1月15日の深夜0時には漁師たちがアミダ様の札を求めて参拝に訪れたそうです。
 
アミダ様のご開帳は毎年1月15日か、その近くの土日に行われます。かつては深夜0時に行っていましたが、行事に参加出来る方が増えるようにと正午にご開帳をするようになりました。
 
行事は、御住職がお経を唱えながら阿弥陀堂をご開帳し、十王堂の管理を行っている「十五日念仏講中」のお母さんたちや、行事に参加した地域の皆さんによってお膳や鏡餅などが供えられます。供えられた鏡餅は十王堂前で焚かれた「柴灯(せど)」で真っ黒になるまで焼かれます。この餅を「護摩(ごま)餅」と呼び、「無病息災」の御利益があるお餅として参加者に配布されます。
 
「一年、まめ(元気)でありますように」と温かい護摩餅を配布するお母さんたちの笑顔からは、晴れやかな一年の始まりが連想されます。
 
平成29(2017)年3月掲載
 
■参考文献
『男鹿半島史Ⅲ 北浦誌』
 
【関連リンク】産地直送ブログ
海の安全を守る!安全寺地域のアミダ様(2019年1月掲載)

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