羽後町の七曲峠の登り口に向かって左側、川沿いの小道に入ると、木立に囲まれた御嶽(みたけ)神社が見えてきます。最初に見えてくるのが、小さな建物と山門。山門には、二体の馬の石像が安置されています。
色とりどりの布で飾られた2頭の馬の、少しずんぐりしたポニーのような姿は、案内によると「日本馬固有の姿を良心的に彫り上げたもの」とあります。しっかりとした四肢が、今のサラブレッドを見慣れた目には新鮮に映ります。
この石馬、地元の方々は親しみを込めて秋田弁の「こ」を語尾につけ、「石馬っこ」と呼びます。向かって右側が男馬、左側が女馬と言われ、子どもが下をくぐると麻疹(はしか)が軽く済む言い伝えが残っています。
さて、山門をくぐり、少し行くと、小さな滝が見えてきます。「不動の滝」名前の通り、滝が流れる岩盤には、磨滅してもう見えませんが、不動明王の「種子」と呼ばれる梵字が書かれていたといわれます。その滝の水で目を洗えば、眼病にご利益があると伝えられています。
滝の横から、急峻な参道が続いています。つづら折りの坂を登ると、御嶽神社の古風な社殿が姿をあらわします。
御嶽神社から少し離れた所には駒形神社の社殿があります。周囲には南北朝時代の板碑もあり、長い信仰の歴史を感じることができるでしょう。駒形神社は牛馬の守り神としてあがめられ、境内にある笹を石馬っこに備えてから牛馬に食べさせると、無病息災になるという伝説があります。
馬がまだ多く活躍していたころ、駒形神社のお祭りの日には、たくさんの着飾った馬たちが神社の裏にある「馬道」を通って参拝したといいます。
この「馬道」は表の参道よりはずっとなだらかになっています。石馬っこの山門を右手に見て、さらに奥に進めば馬道に入ることができます。
※参道は急な山道となっています。不動の滝から奥への参拝の際は、足元とクマにご注意ください。
■参考文献
『水と緑と史跡の里 見て歩記・資料編』
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