横手市福島(ふくじま)地域には、「田村根っこ」と呼ばれる泥炭(でいたん:長い年月をかけて草や根が蓄積した土をよく乾かした燃料)が伝わっていますが、その泥炭にまつわる昔話があるのをご存じでしょうか。
遥か昔のこと、その日、田村の里はひどい吹雪でした。一人のみすぼらしいお坊さんが、一軒の家へたどり着きました。その家では、ちょうど大きな鍋で芋を煮ていましたが、その家の主人は「この芋は石芋だから、なかなか煮えない。別の家へ行ってみたら良い」と、お坊さんを追い返してしまいました。
お坊さんが隣の小さな家を訪ねると、その家の女性はお坊さんを温かくもてなしました。時が経ち、囲炉裏の火が弱くなると、家の中はあっという間に寒くなってしまいました。女性は、「このあたりは山が無いため、木材などの焚物が不足しているのです」と、申し訳なさそうに話すのでした。
夜が明けると、お坊さんは「春になったら裏の荒地を掘ってみてください」と女性に伝え、旅立っていきました。
春になり、お坊さんの言葉のとおり荒地を掘ってみると、黒土ばかりで何もありませんでしたが、焚き火が黒土に燃え移ったことから、この周辺の土は燃える土(泥炭)であることが分かりました。それから村人たちは、燃える土を「田村根っこ」と呼んで燃料としたと言われています。
その後、吹雪の日にやってきたお坊さんは、弘法大師様であったと言い伝えられ、弘法大師様に嘘をついた家では、それから「芋を煮ると石のように固くて食べられなくなった」という後日談も残されています。
■参考文献
『大雄村史』
【関連リンク】産地直送ブログ
→地域の伝統をつなぐ!横手市福島地域の「根っこ掘り」(2019年6月掲載)
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