80年の歴史を持つ天神集落のシンボル

 本海番楽、貝沢からうすからみ、猿倉人形芝居など数多くの郷土芸能が伝わる由利本荘市鳥海地域の中で、笹子(じねご)地域の天神集落に伝えられてきたのが天神あやとりです。

 その由来は諸説あり、地元では、笹子地域と雄勝町の院内銀山との往来が盛んだった昭和初期、天神集落の若者が、四国方面から興行にきていた一座のあやとり芸に心惹かれ、その技を習得し、独自の芸に進化しながら、天神集落で伝承してきたと言われています。その後、昭和55年(1980)年に天神あやとり保存会が組織され、芸能の伝承に努めており、由利本荘市の無形民族文化財にも指定されています。

 歌い手1人、太鼓方2人、踊り手7人で構成される天神あやとりは、お囃子に合わせ「あや棒」と呼ばれる長さ40センチほどの色鮮やかな飾りのついた棒を持って舞うスピード感あふれる郷土芸能です。

 民謡・笹子小原節に併せて、半天に襷(たすき)がけした華やかな踊り手が、正座をしたままあや棒を頭上で舞わせる姿が特徴で、子供から年配者まで性別も関係なく参加できるのも大きな魅力のひとつです。

 昔、天神集落では、お盆期間に集落内3つの神社で3日連続お祭りを行い、さまざまな出し物とともに天神あやとりを披露したそうです。

 演じる舞台も全て自分達で設置し、1日目が終わったら、舞台を別の神社へ移動。2日目が終わったら、またその繰り返し。天神町内会の皆さんは「お盆前は半月は特訓をした。3日連続はさすがに疲れるけど、あやとりや芸を見るために、お客さんがいっぱい集まったよ」「あやとりは一人でやるのは簡単だけど、唄に合わせて全員一緒に合わせるのが難しい。ぴったり合わせられなければ練習不足」と話します。

 天神あやとりは、毎年9月の月山神社祭典・宵宮の演芸舞台で披露されています。天神集落のシンボルともいえる郷土芸能です。

平成22(2010)年12月掲載

■参考文献
『鳥海町史』

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由利本荘市上笹子地域の月山神社祭典宵宮・後編(2019年9月掲載)

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