画像:天然のクルマエビ

 夏の加茂青砂の近海は、全長20cmをゆうに超すクルマエビの漁場となっています。 

 このクルマエビ漁の取材に協力して下さったのは、船に乗って50年という大ベテランの漁師、菅原繁喜さん。早朝4時、目前の海と背後の山々が朝靄に包まれている中、繁喜さんたち漁師の朝が始まります。「ドルルルル!」とエンジン音を響かせ、「カンカネ洞」に見送られながら漁港を出発。防波堤によって守られた港を出ると、激しくしぶきを叩きつけてくる日本海が待ち受けています。

 前日から刺し網が仕掛けられているのは、漁港より約1マイル(1.6㎞)ほど離れた地点。仕掛け場所に着くや否や、慣れた手さばきで浮きを掴みあげそのまま網の巻き上げに入ります。激しく揺れる船上もなんのその。繁喜さん曰く、「漁師はバランスを膝でとる。一般人とは作りが違うんだ」。

網からクルマエビを外す菅原繁喜さん

 1本300mの刺し網を巻き上げていくと、ビチビチと激しく暴れるクルマエビが姿を見せます。こちらも手際よく網より外し、生け簀にひょいと投げ込まれます。生け簀に入れられたエビたちはまた元気に泳ぎだします。ここのクルマエビは、サイズ、鮮度、味、どれをとっても一級品、高級食材として取引されています。

 そんな加茂青砂のクルマエビ、漁師さんたちオススメの食べ方は塩焼きです。シンプルな味付けがクルマエビ本来の旨味を引き出します。全体が淡い紅色に染まり、焼きあがったエビのお頭を取ると中から溢れてくるのは、濃厚なエビミソ。お頭にしゃぶりつき、すすると口いっぱいに広がるクルマエビならではの香りとコク。

 男鹿の荒波に育てられた、ピンと引き締まりながらも、ボリューム満点の大きな身は、まさに絶品です。

平成22(2010)年8月掲載

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