─いにしえの伝統を今に残す─
秋田市鵜養(うやしない)地域の東のはずれにある「岩見神社」。苔むした石段は古さと共に積み上げてきたものを感じさせます。この岩見神社で、4月8日に行われるお祭りは、伝統が強く受け継がれています。
春、雪解けもまだ十分でない集落のはずれに、「岩見神社」と大書された一対の幟が立てられます。神社へと続く農道が一気に神さびた空間へと変わるときです。
お祭り当日の朝、会館では薪を使い大がまに湯が沸かされます。会館の中では、しめ縄が張られ、切り絵が飾られて、祭典の準備が着々と進められていました。
祭典の始まる前に、代表者と宮司さんが神社へと向かいます。社殿の中では厳かに神事が行われ、神様への感謝と祈りがささげられました。
湯立の神事は、河辺地域では行われている所も多いそうですが、県内全体でみるとなかなか見られなくなった行事で、人が生きていくために必要な「火」「水」に行事を通して感謝する神事です。大釜に沸かされたお湯を、藁束を使って神職がかき回します。
そうすると、沸騰したお湯の形が「湯花」と呼ばれる形となり、藁に導かれて中央に立ち上ってきます。それを藁でいただき、神前に供えたり、藁に移した湯花そのものに感謝したりします。
一通り終わると、そのあとは「直会(なおらい)」と呼ばれる御神酒をいただく会があります。このとき出るお吸い物にも、伝統的なレシピがあり、今でも大切に守られています。
祭りの最後、お札と「年縄(としな)」と呼ばれるミニサイズのしめ縄のようなものを戴いて、皆さんは帰路につきます。古い年縄は、家の前で塩をかけて焼き、灰は家々の間を流れる堰へと流されます。
遥か昔から、しっかりと守られてきた伝統が鵜養には息づいています。
平成23(2011)年4月掲載
令和5(2023)年5月掲載
【関連リンク】産地直送ブログ
→秋田市鵜養地域の岩見神社祭典(2023年4月掲載)