画像:椿台の防災と「五軒組」


   平成20年(2008年)6月14日8時43分、秋田・岩手・宮城の三県の境界付近でマグニチュード7.2、最大震度6強の直下型地震が発生しました。岩手・宮城内陸地震です。甚大な被害を受けた岩手県、宮城県だけでなく、秋田県もまた強い揺れに見舞われました。
  震源が近かったこともあり、椿台集落を含む東成瀬村椿川に震度5強の揺れが襲います。地元の方の話によると「とても立っていられない」揺れでした。地割れが起き、墓石が倒れ、家の中の物が散乱しました。中にはタンスが倒れ、もし寝ていたら危なかったという人もいたそうです。
  椿台集落では、すぐに防災無線で地域に呼び掛けます。そして地域を巡回し、地割れ等で水道などに被害が起きていないか確認しました。幸い人的被害はなく、物的被害もそれほどではないのが確認されて一安心したそうです。
  しかし、地震発生から6時間後、商店の水道が濁り始めたという連絡が入ります。当時の集落代表の鈴木春一さんはすぐに簡易水道の水源地へと役員を派遣し、タンクが真っ黒に濁っていることを確認しました。以前から地震で水が濁ることが知られており、長期間に及ぶことが予想されたため、集落会・消防団が一体になってすぐに対応を始めました。
  「自分たちでやれることをやろう」と、役場と連絡を取り合いながら、他の地域の簡易水道などから濁りのない水を確保しました。地域の拠点となっている「まるごと自然館」では給水の準備が行われ、1日目から給水がはじまります。
  また、特筆すべきは地域の一人暮らしの高齢者への対応です。
  椿台集落では、毎日重いバケツやタンクを持って行き来ができない高齢者を把握しており、当日から安否の確認も含めて1日2回、水を持っていきました。それから8日間、まだ余震が起こる中、給水活動は続きました。その間、日中は役員と消防団、そして地域のボランティアが当番を決めて常駐し、給水やその他の対応を行いました。日中に仕事を持っている方も何とかローテーションを組んで加わり、水質が安定するまで乗り切りました。
  この経験は、3年後、思わぬ形で活かされることになります。平成23年(2011年)3月11日14時46分、東日本大震災です。
  椿台集落はゆっくりとした揺れだったため、揺れそのものの被害はほとんどありませんでした。しかし、寒いこの時期に停電は起き、更に水の濁りは3年前の地震の教訓があるので、集落では迅速に対応を行います。給水活動の準備などは、実際に濁り始める前から始まったそうです。集落会の役員、そして民生委員が中心となって「まるごと自然館」への避難所の設置、給水体制の確保が行われました。
  この当時、集落代表の鈴木さんはすぐに独り暮らしのお年寄りの家々を回り避難を呼びかけました。寒さが厳しいこの時期に、電気が必要なFF式などのストーブは止まってしまったこと、また強い余震が続く中での不安もあり、避難所へは3人が避難しました。余震の続く中、役員も一緒に宿泊したそうです。この時、消防団に配備されていた照明用の自家発電機が、ストーブ用、照明用などの電源として活躍しました。これを教訓に、東成瀬村では集落ごとに発電機を配備したそうです。震災から3日目、停電が解消されるまで避難は続きました。この後、給水は暫く続けられましたが、大きな混乱もなく椿台集落は震災を乗り切ることができています。
  こうした対応ができたのは、「五軒組」と呼ばれる昔からの集落の仕組みが機能していたからだと言います。7軒ぐらいの家々がそれぞれ班を作り、お互いの面倒を見合っています。それこそ、この五軒組みの中では、独り暮らしの方が「どの部屋で寝ているか分かる」と言います。災害などが起こった時、近所同士すぐに助け合って必要な援助が行えたそうです。
 集落では季節ごとに共同作業が行われますが、高齢者の方々は免除されます。この時、支援が必要な方についての情報共有が行われます。また、役場職員、民生委員、消防団と、地域の維持、安全に欠かせない仕事をしている人が役員をしていることも大きなメリットになっていると言います。
  「小さい地域だから」と役員の方々は言います。しかし、2度の大きな地震を、地域全体がまとまり、大きな混乱もなく乗り切ることができたのは、昔からの助け合いと情報共有の仕組みがしっかりと根付いていたからでした。
平成24(2012)年5月掲載
令和3(2021)年10月更新

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