画像:琴川のナマハゲ

 昭和53年(1978年)に、国の重要無形民俗文化財に指定された「男鹿のナマハゲ」は、男鹿半島の各集落で、大晦日の夜に行われる秋田を代表する伝統行事です。
集落の青年たちが、2本の角が生えた鬼の面をかぶり、わらで出来たケラ(地域によっては“ケデ”と呼びます)をまとい、大声をあげて集落を練り歩く様子は、男鹿の大晦日の風物詩のひとつ。五里合の琴川集落でも、地元の青年会と自治会により、この行事が受け継がれてきています。
 
 ナマハゲは各地で行われるため、所作や道具など、微妙な違いが出てきます。特に違いが表れるのが、ナマハゲのお面です。
琴川では、面作り職人に依頼した、黒い髪の毛の赤と青の面を使用していますが、かつては、集落の人々による手作りの面を使用していました。ケヤキの皮やベニヤ板にベニガラ(ベンガラ)を塗り、眉毛や髭、髪の毛には、海藻や馬の毛を張り付け、銀紙や綿でできた大きな鼻のなまはげは、どこかユーモラスで、集落の個性が、昔のなまはげの面に表れています
 
 大晦日の夜、雪が降りしきる中、琴川の道を歩くのは、なまはげに扮する青年会の若者たちです。「わさわさ」とケラの揺れる音とともに集落を練り歩き、2010年の大晦日には、琴川青年会13人が参加しました。夕方6時を過ぎると琴川公民館を出発し、1軒の家に赤と青のナマハゲ2匹が乗り込みます。

ナマハゲの動きが勢いづくのは、やはり子供のいる家です。玄関に入ると、またたく間に襲ってくる恐怖に、子供たちの泣き叫ぶ声が家中に響き渡ります。青年会や自治会のみなさんは「クリスマスが過ぎると、なまはげがやってくるから憂鬱だった(笑)」と自身の子供時代を振り返ります。2階の子供部屋の押入にまで、なまはげの「けら」が落ちているのを見て「そこまで探すか?」と子供心に感心したそうです。
 
 泣き叫ぶ子供のそばで、大人たちは笑顔で「よくきたな~!」と孫のように、ナマハゲを出迎えます。琴川に住む人は、みな、この行事を経験してきました。「ナマハゲは怖かった」「昔のなまはげはこんなもんじゃないよ」と笑いながら話す若者たちからは、恐怖の対象だけでない、なまはげの姿が浮かび上がってきます。少子化により、琴川でも子供が少なくなってきていますが、バトンリレーのように、なまはげの記憶は、集落の若者たちに引き継がれてきています。 

平成23(2011)年11月掲載

【関連リンク】産地直送ブログ
2018年の琴川集落のなまはげ(2019年1月掲載)

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