八郎潟の周辺には「八郎太郎」を信仰する神社、石碑、石祠が数多く点在しています。八郎太郎は、秋田県の十和田湖、八郎潟、田沢湖にまつわる伝説が各地に残されており、十和田湖の主だった八郎太郎は南祖坊という修行僧との戦いに敗れ、米代川を下って現在の八郎潟を永住の地としたと言われています。
八郎潟の龍神である八郎太郎は、豊漁と船の操業の安全を守ってくれる神様として漁師たちに信仰されてきました。「八竜郷土誌」によると八郎太郎に関するお堂は、八郎潟周辺に21ヶ所確認でき、中でも男鹿市船越の八竜神社が代表的なものとして知られています。
八郎潟の漁業が盛んだった鵜川地域の富岡集落の漁師たちは、八郎太郎のことを親しみを込めて「八郎様」「八郎さん」と呼びます。八郎太郎を祀った石祠が富岡集落に残されており、石祠の背面には「文政4年(1821年)」の年号が刻まれています。八郎潟周辺に点在する祠の中では2番目に古いものと考えられ、石祠の隣には竜を背負った八郎神の石像も建立されています。
もともと石祠は、鵜川川の河口そばにありましたが、基盤整備より現在の富岡集落の一角に移動しました。富岡集落では、毎月10日は「八郎様」の日で、漁師たちが八郎様のお祭りを盛大に行っていました。八郎潟が干拓された後、お祭りは行われなくなりましたが、今も毎月10日になると、現役の漁師さんがお神酒、お菓子を供えてお参りをしています。
平成27(2015)年3月掲載
■参考文献
『八竜町史』
『八竜町郷土史 郷土の記憶 龍騰』
『八郎潟と八郎太郎』天野荘平 著
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