1000年以上前の三種町の上岩川(かみいわかわ)地域を舞台にした伝説「房住山物語(ぼうじゅうさんものがたり)」。昔、山の麓に暮らす翁が標高400mの房住山山頂で、人々に伝え聴かせたのが原型と言われています。
物語は、房住山の名の由来から始まり、天台の沙門・円静の開基、高倉の長者の寄進で賑わう僧坊、そして坂上田村麻呂の蝦夷征伐のくだりで最高潮をむかえます。11人の屈強な蝦夷が男鹿から上岩川に逃れ、その中の「長面(ながつら)3兄弟」の攻防は見どころのひとつです。翁の口伝により地域に伝えられた物語は、江戸時代には紀行家・菅江真澄により記録され、明治時代には石川理紀ノ助翁がその著作で紹介しています。
物語の他にも、房住山の地名の由来が記述されています。観光名所「扇の滝」の景観の形の記述や、陣幕についた血を洗い流した場所「幕洗い沢」のいわれまで、地名のひとつひとつのエピソードが残っています。
上岩川では房住山伝説の他にも、男たちが力自慢につかった「あねこ岩」の民話や藤原の流れをくむ公家が移り住んだなど、いにしえの文化とエピソードが色濃く残っています。2009年には三種町民の手作りミュージカル「房住山物語」も上演されました。
平成22(2010)年4月掲載
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