画像:長岐邸

 藩政時代、小猿部郷(おさるべごう)の親方肝煎(村長)を務めた七日市村の「長岐家」は、周辺村々のまとめ役を担っていました。地域の人々からは「親方(おやかた)」と呼ばれ、地域のリーダー役を務めていたと言います。文政18年(1830年)に建てられた長岐家の邸宅は、藩主・佐竹公が領内巡検の際の本陣(宿)にもなり、当時の肝煎屋敷の様子を現在に伝える貴重な建築として、平成元年(1989年)、北秋田市の有形文化財指定を受けています。
 
 長岐邸は「妻飾り」が施された妻壁が特徴的で、化粧梁や雲型の木鼻も施され、見ごたえ満点。また、内部の引手や釘隠しにも凝った装飾が見られ、藩主の本陣にふさわしい品格を感じさせます。長岐邸は当時「秋田藩家作禁令」により農家の邸宅には禁じられていた「床の間」「書院造り」「板ぶきの屋根」など豪華な作りが随所に見られるのが特徴です。七日市地域の豪農であったことから、これらの造りが黙認されたと推測されています。
 
 歴代当主が使った寝所には「肝煎ハ一代ニシテ郷中ハ永久ニ候」という7代当主・長崎七左衛門(養子であったため長崎姓)の言葉が今も柱掛けが残されています。「肝煎は一代限りだが、守るべき郷中は永久に続く」……肝煎の大切な心構えとして、七左衛門の言葉は今に伝えられています。
 
 長く住まわれていなかった長岐邸ですが、地元有志でつくる「おさるべ元気くらぶ」が中心となり、清掃活動や庭木の手入れ、修繕に取り組みました。現在、長岐邸は地域活動の拠点として様々なイベントが行われ、新たな交流の場として親しまれています。
平成27(2015)年3月掲載
 
■参考文献
『おさるべかだるべ』おさるべ元気くらぶパンフレット
 
【お問合わせ】
●北秋田市教育委員会生涯学習課 文化班
 電話:0186-62-6618(月~金曜/8:30~17:15)
●おさるべ元気くらぶ事務局
 電話:090-6101-8906(長岐賢一)

こちらの記事もおすすめです

伝 明利又城跡と浅利氏墓石群

 七日市地域には、室町時代この地域を支配したと言われる浅利一族にまつわる史跡が残されています。七日市地域の松沢集落から明利又(あかりまた)集落に向かって県道111号を進むと、道路右側に「明利又城跡と浅利氏墓碑群」の...

歴史

史跡

岩脇のブナ

 七日市地域の七日市公民館の南に位置する岩脇集落。集落の南側には岩が露出する山があり、集落の名前の由来となったと言われています。  岩脇集落には「旧阿仁街道のブナ」と呼ばれる巨大なブナの樹があります。幹の直径は1...

自然・施設

花・樹木

江戸時代の治水の歴史

 七日市地域を流れる小猿部川は、両側が切り立った崖のようになっています。大雨が降れば洪水を引き起こし、周囲に甚大な被害をもたらしていました。洪水の被害を食い止めるため、そして農業を安定して営むためにも、農業用水...

歴史

地域の歴史