
横手市増田地区で「りんご染め」の作品を制作し、普及活動をしているりんご染めグループ「プリティアップル」の皆さんが、9月中旬から10月中旬にかけて、秋田県立増田高等学校総合学科の3年生に「りんご染め」の体験授業を行いました。
この授業を受けたのは、芸術、文化系列選択の11名の生徒さんです。増田高校では、芸術、文化系列の選択科目に「工芸」という科目があり、これを選択している生徒さんは地元の伝統工芸である「十文字和紙」の制作を行っています。今回、この十文字和紙に、りんごの枝や葉を使用する「りんご染め」を行うことが組み込まれ、プリティアップルさんに声がかかりました。りんごもまた、増田の特産品です。授業は3回に分けて行われるそうです。


この日、1回目の授業では、まずはりんご染めを体験してもらうこと!早速、代表の横山さんから簡単な説明を受け、取り掛かりましたよ。
初めての体験なので、まずは、木綿素材で行います。


バンダナサイズの布に染めをしたときに模様がでるように、ビー玉や洗濯ばさみ、木の板などを使い輪ゴムでしばりつけたりしました。「どんな柄が出てくるのかワクワクしながら考えてみて。」という横山さんの教えに、生徒たちは真剣。それぞれにこだわりを持って取り組んでいました。

その間、プリティアップルの皆さんは、りんごの枝や葉、赤い実の皮から色素を抽出した液に、酸やアルカリを混ぜていきます。これにより出てくる色が変わってくるとか。彼女たちがが日々、悩み挑戦し続けている工程になります。

模様付けを終えた生徒から、液に浸してきます。温度と浸けている時間で出てくる色や柄も変わってくるとか。
初めてには思えない出来栄え!

完成品を披露する生徒たち。アイデアが素晴らしかった!プリティアップルの皆さんも「私らでは、思いつかないようなデザインをしてくる。若い人の能力はやはり魅力的です。」と感心していましたよ。思い通りに染まらない作品でもそれはそれで味があるということでした。生徒たちも「楽しくてたまらない!」と口々に。また「世界で一枚、自分だけの物ができたのでうれしい。」とも。授業は好評でした!
次回いよいよ十文字和紙にりんご染めをするとのことで、この日の授業の最後は和紙に強化剤を塗りました。これが乾かないと染めができないので、次回までに乾燥させておきます。 和紙にもきれいな染め色がでるのか、次回も楽しみですね。
2回目の授業は十文字和紙に染めが行われました!

生徒さんたちが工芸の授業で、自分たちで作った「十文字和紙」を染めるもの。思いもひとしおです!
あらかじめ強化剤を塗ったこともあり、温度調整も上手にできて、紙がやぶけることなく、さらには見事なグラデーションを付けることができました。教室の窓に貼って乾くまで置いておきますが、りんご染めは草木染めであり、草木染めは直射日光にたいへん弱いとのことで、乾いたらすぐにはがさなければなりません。そこに気を遣ったようですよ。
2回目の授業はここまでです。最後3回目では、生徒さんたちの「ピンクで染めてみたい!」という要望もあり、今回までとは違う色を出そうという趣旨で、いろいろな色付けをしていくそうです。
10月17日(金曜日)、プリティアップルさんの最後の授業になりました。
生徒たちの希望により、この日はオレンジ、ピンク、カーキ、イエローに染めるため、この色を出すための薬剤を抽出液に混ぜ、温度と時間を工夫してりんご染めを行いましたよ。

上の写真はイエローを出したくて頑張っていた生徒。プリティアップルさんに指導をいただき、がんばりました。イエローを出すために抽出液に混ぜた薬剤は「錫(すず)」、温度や染液の量によって、同じ条件でも同じ色を出すのはなかなか難しいのが草木染めである「りんご染め」です。なかなか思い通りの色に染まらず生徒さんも「難しいなあ」と一言。

それでも、根気よく頑張った生徒たち。なんとか4色に染まった十文字和紙が完成です。今回は強化剤を塗らずに行ったものもあるとかで、少し破けてしまったものもありました。プリティアップル代表の横山さんも「私たちも試行錯誤の繰り返しです。特にカーキ色を出すのには、そのために染液に混ぜる鉄は色を出すのが難しく時間がかかる。」と話されていました。

それぞれ、染めが終了したところで、今回の授業に参加した生徒たちから感想の発表をしてもらいましたよ。
生徒さんたちからは共通して「色の濃淡が自分の予想していたものと違っていた。」という言葉が多かったです。「1回目の授業の模様付けが楽しく、もっといろいろな図案を考案したかったので、そこに時間をかけたかった。」や「1回目の授業で染めた色が一番印象に残りました。」など、1回目の授業はインパクトが大きかったようですよ。
プリティアップルの横山さんから最後に一言!「自分たちもいろいろな経験を経て「色」を発見してきました。今日、染めた色は本当にきれいです。私たちでもこのような色を出すのは難しいよ。たくさんチャレンジして失敗して学びを得てほしい。卒業しても、ぜひ「りんご染め」に関わってほしいです。」と。
プリティアップルはもっとたくさんの方々に「りんご染め」を知ってほしいと、体験講座を随時開催しています。予約が必要になりますが、興味がある方は、ぜひ体験してみませんか。
※プリティアップル_りんご染め @pretty_apple_masuda(Instagram)
この3回の授業は、生徒さんたちに郷土の文化を受け継いでほしい学校側の思いと、プリティアップルがりんご染めを始めたきっかけ、思いを生徒さんに伝え、未来へとつないでほしい気持ちが合致して行われました。生徒さんたちは、りんご染めで染まった十文字和紙で作品を創りあげ、来月の学校祭で展示、販売する予定になっています。
以上、横手市亀田地域で活動するプリティアップルの様子をお届けしました!
●おまけ
3回目の授業では、絹にも4色の染めを行っていました。鮮やかですね。

生徒さんたちが増田蔵の日の「じまん市」に出品した作品です。
増田高校の総合学科、芸術・文化系列を選択している生徒さんたちは、湯沢市の伝統工芸「川連漆器」の制作体験授業も行っています。秋田県内の高校では、唯一ここだけだそうです。