8月14日、由利本荘市矢島の坂之下集落に「坂之下番楽」を見に行ってきました!
14日の坂之下集落は晴天に恵まれました。写真は矢島の市街地から見た鳥海山です。
ブルーからピンクにグラデーションがかった澄んだ夕焼け空に
鳥海山のシルエットがくっきり浮かび上がっています。
19時ちょっと前、坂之下会館前に到着すると特設舞台が準備されていました。
ブルーシートが敷かれた観客席には、50人近くの集落の人が集まっています。
すでに坂之下番楽保存会は、
会館から歩いて3分ほどの場所にある熊野神社で獅子舞を奉納してきていました。
前日の13日は集落の一軒一軒を獅子がまわる「家々まわり」が夜通しかけて行われたそうです。
終了したのはなんと14日のお昼過ぎ!!!
「昨日見にきてほしかった~」と話す男性の姿も。
坂之下集落は53世帯あります。全てまわり終えたあとは爽快でしょうね~
(疲れてそれどころじゃないかな……?)
徹夜明けの疲れも感じさせず番楽最初の演目「獅子舞」が始まりました。
囃手は太鼓、笛、手平鉦、言立(いいたて)役。
そして獅子の「舞手」と、幕を持つ「幕取り」により獅子舞が演じられます。
震えたり伸び縮みしたりすることにより獅子が悶え苦しんでいるようです。
後半になると獅子の口が何度も素早く開け閉めされ
「パンパンパン!」と響く音が獅子の雄叫びのようにも聞こえました。
獅子舞のあとも演目が続きます。
坂之下番楽を伝えた本海上人は伝えた当時、高齢だったこともあり
中腰気味に踊るのが特徴と言われています。
「あっ!次、三番叟」と観客席から子どもの声が聞こえてきました。
こちらは「三人太刀」。
男の子バージョンと女の子バージョンが披露されました。
演じているのは矢島小学校・番楽クラブの児童の皆さんです。
矢島小学校では地域外の児童にも坂之下番楽を教える取り組みを始めており、
今回、集落の皆さんの前で初披露されました。
「私の息子です」「私の娘です」と、少し照れ気味に紹介する保存会の方がいい味だしてます。
お父さんお母さんたちは、どきどきしながら子どもたちの晴れ舞台を見守ったことでしょう。
演目の合間にはスイカやジュースが無料で観客に配られています!
たくさんの住民の方と話すことができました。
ビール片手にいい感じになっていた男性は
「昨日は雨が降って、俺の家に来たの夜12時だったよ~」と
前日の家々まわりの様子を嬉しそうに教えてくれました。
また、坂之下番楽が香川県に行って演じてきた時のことを教えてくれた男性もいました。旧矢島町は矢島藩の関係で香川県と交流があります。地元名物の松皮餅をたくさん持っていったところ大人気だったそうです。
この他にも「たいしたもんだべ!」と胸をはるおじいさんの姿も。
住民の皆さんと心地よく話している間に、「伊賀」を撮影し忘れてしまいました……反省、反省。
幕が揺れているので、そろそろ次の演目「餅搗」が始まりそうです。
すると住民の女性が「前からじゃなく、“後ろ”からでてくるわよ」と教えてくれました。
本当です! いつの間にか踊り手が観客の後ろにまわっていました。
観客席からは「待ってました!」とかけ声がかかります。
踊り手は、餅(お菓子)を観客一人一人に配りながら舞台に向かいます。
滑稽な道化役が、餅つきに悪戦苦闘する「餅搗(もちつき)」は番楽一番の人気演目です。
最前列の子どもに布を投げつけ引っ張りあい!
その後も言立(いいたて)役との掛け合いが楽しい~。「腕の毛そったか?」とつっこまれてます。
囃手の笛のお二人も見入っている様子。
ちなみに笛のお二人は親子だと、住民の方から教えていただきました。
親子で同じお囃子を奏でるっていいですね~。
そうこうしているうちに、観客にお餅を配りはじめました。
太鼓の名手には、口にお菓子を渡しています。
そして最後の演目・唐臼舞(からうすまい)。
4人の男性がやはり餅をつく様子が演じられます。
二人交互に交錯しながらのアクロバティックな動きが特徴で、
最後の演目ともあって、観客の歓声も一際大きくなっていました。
「集落の宝は何といっても番楽だすな」。
全ての演目を見終えたあと、以前、住民の方が話していた言葉をふと思い出しました。
お盆期間ということもあり、8月14日に見るのは難しいかもしれませんが、
坂之下番楽は、ぜひこの日に見て欲しいと感じた取材でした。
演じ手はもちろん、番楽を見守る住民の姿を一緒に見れば、
「1番の宝は番楽」という言葉の意味がきっと伝わってきます。
坂之下番楽のリポートでした!