にかほ市の琴浦地域で、毎年春と秋の中彼岸に行われている「百万遍念仏講」は、琴浦自治会が支援する琴浦自治会指定団体の一つ「琴浦集落百万遍講中」によって継承されている行事です。
口伝では、百万遍念仏講は300年以上前から行われていると伝わっていますが、「講中」によって継承されるようになったのは160年以上前とされています。百万遍念仏講で使用されている伏鐘(ふせがね)には「奉納 熊野山大権現 嘉永2年(1849年)」と記されており、おそらくその頃から継承が行われているのではないか、と推測されます。
琴浦地域には六地蔵・弥勒菩薩・牛頭天王・辻地蔵尊などが鎮座しており、いずれもかつての「琴浦村」の入り口にあったものと伝えられています。また、琴浦地域で起こった昭和34年(1959年)の大火により焼失した地蔵様も、その中の一つと言われています。
百万遍念仏講では、地蔵様5ヶ所や、舟が転覆して亡くなった方のお墓などの計6ヶ所を巡り、祈りを捧げます。小さな数珠の球を100個数える間に7メートルほどもある大きな数珠を「なんまいだ なんまいだんぶつ なんまいだ」と唱えながら回し続けます。
数珠回しの後、地蔵様に向かって「彼岸御詠歌(ひがんごえいか)」という唄を唄います。唄は3番まであり、それぞれ3回ずつ繰り返して唄われます。その歌詞からは、「悪病が村に入ってこないように」という願いが伝わってきます。
この唄の旋律が特徴的で「先になって継承を行ってきた方々がいないと唄うのが難しい」と地域の方が話していました。
今年、御年93歳になられた方が、母の代から受け継がれてきた百万遍念仏講を伝えてきました。「絶対になくしてはいけない」と、10年前から継承の世代交代が行われています。
平成28(2016)年3月掲載
こちらの記事もおすすめです
熊野神社と例大祭
にかほ市琴浦地域の産土である熊野神社は、かつて琴浦地域から南東の方角にある鐙館(あぶみだて)周辺に鎮座していたと伝わっています。神社の歴史は宝治年間(1247年~1249年)以前から伝わっているとされ、その頃には神...
伝統行事・イベント
伝統行事
防災活動の足跡を辿る
「格好付けて、いきなり難しいことをやってもな」。そう話すのは、にかほ市の琴浦自治会の皆さん。琴浦地域は約400世帯が住み、平沢海水浴場が間近に広がる地域です。 昔から目立った災害は起こらず、「津波が来る」とい...
地域活動
自主防災
子供会の三世代交流
にかほ市琴浦地域では、地域の子供会が20年ほど前から行っている子供会行事があります。毎年、冬休みに入った頃に高齢者と子供たちの交流を図るとともに、縄ない、お手玉、おはじきなどの昔遊びを伝承することを目的としてい...
地域活動
世代間交流