画像:大山家住宅

 鵜川地域の北東部、飯塚集落には代々村役(村長)を務めた大山家の住宅が残されています。およそ270年前、江戸時代後期に建てられました。

 主屋から馬屋を突出させたL字型の曲屋(まがりや)で、労働力として家族同様に大切にされた馬と人が同じ建物に住んでいました。こうした建物は秋田県内ではよく見られる「中門づくり」と呼ばれています。中門づくりは、曲がり家の一種で、馬家の部分(突き出した部分)に出入口があるのが中門づくりと言われています。広い馬屋と土間は、冬が長い地域の農家が様々な作業や貯蔵を行うために必要とされた空間でした。
 
 大山家は、桁から軒先まで腕木を伸ばして屋根を支える「せがい」という工法を用いています。当時、一般の住宅には禁じられていた工法で、藩から上層階級にのみ許されていました。茅葺屋根には野芝を生やして耐久性を図っています。窓には町家風の出格子(外から出窓のように見える格子)が取り付けられています。
 
 家の内部は装飾が少なく、簡素ですっきりとした美しさを持っています。保存状態が良く、中門づくりの典型例として国指定の重要文化財となっています。かつての暮らしをしのばせる、貴重な農家建築を訪れてみてはいかがでしょうか。内部を見学するには、事前予約が必要です。
 
平成27(2015)年3月掲載
【お問い合わせ】三種町八竜公民館 
●電話 0185-85-2177
●ウェブサイト 三種町役場
 
■参考文献
『八竜町郷土史 郷土の記憶 龍騰』

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