写真:岩本さん講演様子
 5月24日(土曜日)、能代市文化会館にて「一般財団法人 地域・魅力化プラットフォーム代表理事」岩本悠さん による講演会が開催されました。「教育を基軸にした地域創生」というテーマで話され、人口減少が進む島根県の離島で、生徒数減少により廃校寸前だった県立高校を再生する取り組みを行い生徒数を回復させて学校存続に結び付け、さらには地域の意識改革や活性化にも結び付けたことを紹介する内容となっていました。
 それでは秋田県に入られた前日からの様子と併せてお届けします!

 前日の23日(金曜日)、秋田入りした岩本さん。
写真:食事会の様子   写真:男鹿市長と岩本さん
 「地域みらい留学」を実施している県立男鹿海洋高等学校(以下「海洋高校」)視察のため、男鹿市で昼食をとられ、男鹿市長や市職員の方々と交流を図りました。
※「地域みらい留学」→住んでいる都道府県の枠を超えて、自分の興味関心にあった高校を選択し、高校3年間をその地域で過ごす国内進学プログラムで、少人数かつ地域に開かれた教育の中、多様な経験と挑戦の機会があることで、高校生一人ひとりの個性と自立心が育まれます。

写真:男鹿名物 石焼料理   写真:石焼鍋の石
 昼食のメニューは、男鹿と言えばの「石焼き鍋」!普段は男鹿温泉郷でしか食することができないのですが、この日は特別に道の駅「オガーレ」でいただくことができました。
写真:石を鍋に入れる様子
 具材が入った桶に焼いた石を入れた瞬間、湯気を立ち上げ一気にゴボゴボと音を立てて沸騰し始めるところは、岩本さんも驚かれていましたよ。

 昼食後に、海洋高校へ向かいました。
写真:海洋高校内 風と海の学校 
 海洋高校内に開設された「海と風の学校あきた」!洋上風力発電の総合訓練センターになります。最新の操船シミュレータを完備していて、海洋高校の生徒に開放もされており、実際に授業で使用しているそうです。

写真:海洋高校のプール   写真:海洋高校先生と話す岩本さん
 秋田県で唯一、水産系の科目が学べる高校ということで、水深10メートルの屋内プールが完備されています。ここでダイビングの練習をしたりするそうです。このようなプールは全国に4校しかなく、大変、貴重なものとか。また、「海と風の学校あきた」が開設されたときに設置され、洋上での風車作業を想定した安全訓練ができる設備も完備されています。岩本さんも熱心に海洋高校教諭に質問されていました。

 そして、この日は、たまたま、海洋高校の新たな実習船「第6代眞山丸(しんざんまる)」の竣工式の日でもありました。5代目は2002年から使用されていて、その役目を終えたようです。
写真:真山丸 

写真:真山丸に乗り込む岩本さん  写真:真山丸操縦室 
 第6代眞山丸には先進的な機器が導入されていて、船長より詳しい説明を受けました。ここでも、岩本氏は「海洋高校は素晴らしい設備をもった学校」という印象が強かったようですよ。

写真:集合写真
 約2時間の短い時間でしたが、充実した視察になったようです。

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 そして、講演会講演会本番を迎えました!
写真:能登裕子さん
   岩本氏のお話の前に、この日の講演会を能代観光協会とともに共催している能代市自治連合協議会の能登会長から、ご挨拶がありました。能登さんは、実は岩本氏のご両親と「うどん」が縁で約10年前から親交がありました。この日を迎えられたのも、その関係があったからとか。人との縁はどこにつながるか分からないですね。

写真:岩本さん講演   
 まずは、ご自身の紹介から始まりました。自己紹介の後によく「なぜ、そこに移住したのですか?」と聞かれるそうです。「社会課題の最前線を行く地域、いずれは日本の多くの地域で発生することで日本の未来の重要な課題が山積していた。これらの課題に立ち向かうことが他の地域のヒントにもなるだろう、ピンチは変わっていけるチャンスだと思った。」からだそうです。

写真:スライド
  移住した当時は、そこでは、高校を卒業したら出ていく、都会に行かないと仕事ができない、という昭和の発想が当たり前だったようですが、岩本氏は、高校を「地域で唯一の最高学府」と位置づけ、街づくり・人づくりの拠点と捉え直すことを提案、地元の人材が地域から流出している状況を変えるため、地域で自ら事業を起こす若者が必要であると考えました。
20世紀のふるさと観「志を果たして帰る」を21世紀のふるさと観「志を果たしに還る」に変える、という発想で改革を進めていったそうです。

 写真:スライド        写真:スライド

写真:スライド    写真:スライド
 「人こそが最高の観光地」として、人とのつながりを重視した「人つなぎ」という観光ツアーを高校生とともに企画、実施。この取り組みにより、ツアーへの都市部の参加者が増加し、その一部が高校へ入学するという循環が生まれました。外からの生徒の積極的な活動に触発され、地元の生徒も地域活動に参加するようになり、地域の方々がサポートする体制を整えたそうです。都市部からの受験者が増加し、倍率が2倍になることもあったとか。同時に家族移住も発生し、さらには地元の生徒の県外への進学率が減り、地元の高校への入学率が上がったそうです。
 これらの取り組みは「地域づくりの起爆剤」としてよく言われる「よそ者、若者、ばか者」といった異質な要素を取り込む考え方に基づいているそうです。

 岩本氏の話が終わると質問タイムが設けられ、その後、この日の午前中に行われた中学生・高校生のワークショップで考えられたアイデアの発表がありましたよ。
写真:ワークショップの様子        写真:ワークショップの様子
テーマは「能代の中高生による、全国の中学生のための、新たな観光プランづくり」!4つの班構成で4種類のアイデアが出たようです。

写真:スライド         写真:高校生による発表

写真:高校生による発表          写真:高校生による発表
    それぞれ個性があふれた発表内容が印象的でした。ふと、能代の明るい未来が浮かんできたような感じを受けました。

写真:スライド      写真:スライド  
    短い時間ではありましたが、とても内容の濃い講演内容でした。
    未来をつくる次世代の子どもたちのために、そして若者に選ばれる魅力ある高校づくり・人づくり・地域づくりに向けて、子どものチャレンジを応援する大人、もっと学ぶ意欲がある大人のあり方が大事で、さらには、違いを認められる環境、多様性があり開かれた土壌が大事なんだいう締めのお話は、とても印象的なものでした!

写真:集合写真
   最後は岩本さんを囲んで集合写真!主催者である能代市自治連合会協議会の能登さんは、18年間を費やして教育を基軸とした地方創生に取り組んだ若者、岩本悠さんを地元にお招きするのが、長年の夢でもありました。この日の講演会に参加された約90名の方々にとっても、実り多き日になったのではないでしょうか。皆さんの益々のご発展をお祈りいたします!

 以上、能代市上町地域からお届けしました。

【岩本悠氏のご紹介】
写真:岩本さん
 岩本氏は、東京都出身、学生時代にアジア・アフリカ20カ国の開発現場を巡り、その体験を基にした学習記・旅行日記を出版し、その収入でアフガニスタンに学校を建設。卒業後は、ソニー株式会社で人材育成や組織開発、社会貢献事業に携わった後、2006年に島根県海士町に移住。2007年から隠岐島前高校の魅力化に取り組み、2015年からは島根県教育魅力化特命官として島根県の高校改革や人づくりに携わり、2017年に一般財団法人地域教育魅力化センターを設立し、現在に至ります。