秋田市河辺岩見三内の鵜養地域は、昨今、人口減少が進む中でも色々な取り組みにチャレンジして、地域の活性化を図ってきています。
そして今年度は、秋田県立大学、アグリビジネス学科の地域革新プロジェクトの対象地域に選定され、
7月10日(水)、県立大の3年生が現地調査に訪れました♪
昨年に続き、今年もまた「元気ムラ」が調査の対象地域になったということで、この日、私たち取材班もお邪魔してきました^^
では、当日の様子をお届けします!
このプロジェクトの目的は、農山漁村における生業及び地域生活の活力ある将来像を提示すること。
今回の調査テーマは「中山間農村地域の社会活力の現状と今後の地域振興の展望」!
そのために、まずは現地調査ということで、地域住民とともにフイールドワークや聞き取り調査を行いました。
フイールドワークの前に、顔合わせということで、鵜養公民館に皆さんが集まり、
担当教員である重岡教授から、住民の方に向けて、「このプロジェクトは農業活性化、地域活性化につながる授業だと思っています。こういう活動を通して、学生の考え方も大きく変化していくので、住民の皆様のご協力に感謝します。」と、挨拶がありました。
石塚会長からは、これに呼応するように、「ここはその昔から農業を代々営み、集落を囲むようにして田園風景が広がっています。また山々にも囲まれていて、森林を利用した林業、薪づくりを行ってもいました。そうしたことが町内の啓発活動に繋がってきています。」と、地域について簡単な紹介がありました。
その後は、学生たちの自己紹介。この日は6名の学生と1名の修士生が参加していました。
驚いたのは、全員、秋田県外の出身者だということでした!
宮城県や山形県など、東北地方の方もいましたが、中には兵庫県や奈良県など関西出身の学生も…
中山間農村地域に興味を示し、はるばる秋田県まで学びにきていただけたのは、ありがたいことですね(^^)
住民の方々からの自己紹介も♪
鵜養酒米の郷の方々、元気ムラ登録時にグリーンツーリズム活動を積極的に行っていた方、さらには、元祖、原木シイタケ栽培者である石塚滿さんなど地域資源を有効活用し、発展させてきた方々が集まりましたよ(^^)
一通りの紹介を終えた後、フイールドワークに向かいました。
●佐藤家
前会長宅でもある佐藤家!
敷地内にある蔵が『米蔵』という説があり、かつては庄屋さんだったのではないかと言われているそうです。
文政12年(1829)、10代藩主・佐竹義厚(よしひろ)が18歳の頃、この地へよく遊覧に訪れ、その際の佐竹公の宿泊場所となっていたとも言われています。
家の前には巨大なもみの木があり、市の天然記念物にも指定されています。また、家の向かい側には堰があり、そこにある祠には、佐藤家の神様が祀られているとの
ことです。
こんなことからも、鵜養地域のその歴史は相当古くから続いていることが伺えますね。
●鵜養酒米の郷が営む無農薬栽培の田んぼ
学生さんたちは、無農薬栽培の大変なところを熱心に伺っていましたね。
平成29(2017)年に、秋田市の酒造会社がここ鵜養地域で“無農薬栽培の酒米づくり”を始め、その後一緒に取り組んできた佐藤代表。現在は新たに無農薬主食米栽培にも取り組んでいます。今年は生育も順調とのことで、稲の青々しさが日本の原風景を醸し出しているように見えました。
●伏伸(ふのし)の滝
地域の観光名所でもあり、水量が豊富で、川底が見えるほどに透き通った水の流れを間近に見ながら散策することができます。
しかしこの日は、前日までの雨で、濁流の滝に変化していました(^-^;
↓ ↓ ↓
普段は、こんなに穏やかで水が透明な滝ですが、自然の猛威にはかないません。
ほかにも何か所かまわりましたが、まずは、主だったところを紹介させていただきました。
公民館に戻り、皆で昼食をいただき、午後の部に入りましたよ!
午後は、住民の方からの聞き取りです。学生さんは、二人ずつ三つの班に分かれ、それぞれの研究テーマに沿った話題に入りました♪
●地域自治班
テーマは「町内会と秋田市の酒造会社の関係について」です。
・町内会について→全戸(46戸)が参加していて、強制はしていないが皆、地域のことに関心があるようで集まってくれている。これは自慢できることの一つ。
・酒造会社について→酒造会社が無農薬酒米栽培に入ってきたことで、耕作面積が20から40町歩に増え、地域の農業を守ることに繋がっていると思う。農業を守るということは、集落維持にも寄与することだと思うから、これからも酒造会社と連携を図りたい。
※酒造会社は町内会活動にもよく参加してくれる。昨年の大雨の際も、水路の補修を手伝ってくれた。
●地域活性化班
テーマは「鵜養町内会の地域資源とその利活用」についてでした…が
学生たちは色々と事前調べをしていて、たくさんの質問を用意していました。しかし少しばかり路線がそれ、半分以上、重岡教授の質問タイムになっていたかもです(^-^;
重岡教授は、細かな質問をいくつもしておられましたが、学生の代わりに、
「もし、彼らの中に、ここに移り住んで空き家を改装して、農家民宿あるいは農家レストランをやりたいとなったときに、皆さんは快く受け入れてくれるものでしょうか、そして、何より彼らにここの文化を継承していただけるものでしょうか。」という内容のことを熱心に聞いておられました。
住民→ここに馴染むことが大事だろう。住民と親しみ、顔見知りになる。若者が一生懸命頑張っていたら、私ら年寄りは共感するし、応援したくなる。そういうものでしょう(^^) と返答していました。
また、秋田市の酒造会社が参入したことで、住民の郷土愛着の意識の変化が見られましたか?という質問には、
→荒れた農地を復田してくれたことは大変ありがたい。意義があった。けれども、それは「酒米の郷」メンバー住民の助けがあったから。それがなければできなかった。
復田したときは、皆、手をたたいて喜んだくらいだから愛着が深まったのは当然だと思う!
そして、現在の中高齢住民が若かかりし頃まで、毎年12月に行われていたという“山の神行事”! これは本当に住民が一つになり楽しかった。復活できることなら復活したいとの声に、学生たちが「山の神行事現代版として、復活することにしても大丈夫ですか?」と問いかけ、「大いに歓迎する^^」と住民は笑顔で応えていましたよ♪
●農業振興班
酒米の郷代表の佐藤さんは元々、酒造会社が来る前までは、花卉栽培に勤しんでいました。
・佐藤家が花卉栽培から無農薬酒米栽培に転換した理由は?
→社長のオーラと「鵜養に蔵を建てる」の一声に奮い立ったそうです。
なんだかドラマの展開のような話です♪
→元杜氏の方が、地域に根差して自ら取り組んでいる姿勢を見て、住民の意識も変わっていったんだよ!
酒のラベルに生産者として名前が載るのは、酒米農家冥利につきる。元杜氏の方が地域に根付いて現実的な方法を一緒に考えてくれたおかげで今があると思っている。
と、元杜氏の方の存在の大きさが伝わってきた内容の話でした。
こうして、約1時間半にわたり、住民への聞き取りが終了しました。
あっという間の1時間半!話題はまだまだ尽きないようでした。住民の皆さんの熱心さにも脱帽です(^^)
最後に、重岡教授から締めの挨拶です。
「秋には、秋田市の酒造会社にヒアリングに行く予定です。本日のヒアリングとあわせて、学生が聞いた内容をまとめ、
鵜養地域の収穫祭にあわせて、報告会ができたらいいなと思っています。11月頃でしょうか。その時はまたよろしくお願い
いたします。」と。
そして、もう一つ、「日本の農村の原風景の定義は『ムラ・ノラ・ヤマ』と言われていますが、まさに鵜養地域はこれを満たしています。ちなみに『ノラ』とは野良犬の意味で、神社のこま犬のことを指しているそうです。
地域の地図を見てもわかるようにこの三つが集約されています。私は筑波の研究所にいたときに、全国700以上の集落を見て
回りましたが、鵜養地域以上の日本の原風景の景観を見たことはありません。」
この日も、私たち取材班も一緒にフィールドワークをしましたが、改めてその日本の原風景を感じてきました。
買い物や病院通いなど不便な点も多少あるようですが、地域住民はここの資源に誇りを持ち、これを繋いでいこうと
日々、創意工夫を重ねているように思えた一日でした♪
学生さんたちが、この先、どのような提案を示していくのか楽しみですね(^^)
以上、秋田市鵜養地域からお届けしました!