2012年12月11日、大館市・山田地域の伝統行事「ジンジョ様祭り」が行われました!
「ジンジョ様祭り」は室町時代末期から続くと言い伝えられている、
歴史ある伝統行事で「子孫繁栄や山田地域の幸せ、平安、豊作を願う」お祭りです。
山田地域のジンジョ様とは「地蔵様」が訛った呼び方です。
山田地域には7つの町内、「常会」があり、
その「7常会」に一ヵ所ずつジンジョ様が祀られています。
7常会それぞれのジンジョ様の表情には個性があります。
ジンジョ様の顔は色が薄くなってきたら塗り直すなどして、
それぞれの常会で代々受け継がれてきたものです。
一方、ジンジョ様の体は毎年新しいものへ作り直されていきます。
かつては祭り前日の夜に作り始め、夜中までかかって作ったそうです。
今では、前日の明るいうちから作り始めたり、
祭りが行われる前の日曜日に集まって作ったりすることもあります。
ジンジョ様は男神と女神がつがいになって祀られており、
男神には「男神 ヤチマタヒコ」「女神 ヤチマタヒメ」の2柱の神様が宿り、
女神には「女神 クナドノカミ」が宿ります。
●赤坂常会のジンジョ様
男神は手に槍を持ち、女神は手に矢を持って肩に弓をかけています。
その武器を手に、これから一年間ジンジョ様は
山田地域を脅かす疫病や害虫などから守ってくださいます。
ジンジョ様は山田地域の「塞(さい)の神」であり、
「塞の神」とは「道祖神(どうそじん)」「地蔵(ジンジョ)」などを含めた総称を言います。
今回お邪魔させていただいたのは
「新明岱(しんめいたい)」と「赤坂」の2つの常会です。
それではまず始めに、新明岱常会の奉納の様子から!
ジンジョ様の宿は1年ごとに当番が引き継がれていきます。
今年の新明岱常会の宿は藤島光雄さんのお宅です。
毎年当番の方の家で神事が行われ、奉納の出発地点になります。
取材班が辿り着いたときには既に神事は済んでしまっていました(道に迷いました……)。
実は、山田地域の中心部はまるで迷路のように入り組んでおり、それは地元の方からも太鼓判が。
2009年には、その地形を利用して「山田迷路ウオークラリー」が行われました。
「一人で行ったら戻れなくなるよ(笑)」
という言葉が印象的でした(汗)。
ジンジョ様の奉納はそれぞれの常会の境目まで太鼓を打ち鳴らしながら
ジンジョ様を抱えて練り歩き、最後に「御堂(おんどう)」にジンジョ様を祀ります。
御堂は少し高い場所にあり、坂を上っていきます。
御堂には折りたたみ式のお供え台が備え付けられており、台の上には
御神酒、煮物、きんぴらごぼう、紅白なますが供えられます。
お供えにはもう一つ「しとぎ」と言われるものがあります。
●しとぎ
これは、神様がお戻りになるときに持っていくもので、
米粉と水のみで作られています。
奉納の際にはジンジョ様の口元に一つずつ供え「食べさせる」そうです。
新明岱常会の皆さん、ありがとうございました!
この後、一人では迷ってしまうのでと、藤島さんが赤坂常会まで
連れて行ってくださいました~!
本当にありがとうございました!
赤坂常会の今年の宿は、幸坂俊男さんのご自宅です!
ジンジョ様の前には御神酒、しとぎ、水、白米、大根、ごぼう、
紅白なますや、大根と昆布の煮付けなどがお供えされていました。
ジンジョ様祭りの祭事は「祷渡し(とわたし)」、「八皿(やさら)の儀」、「奉納」と続きます。
祭事の前に、宮司さんによる神事が行われます。
この神事により、ジンジョ様に魂が宿るのです。
神事には荘厳な雰囲気が漂い、宮司さんの声のみが室内に響きます……。
神事の後、魂が宿ったジンジョ様の前で赤坂常会の皆さんは食事をとります。
食事を取った後は「祷渡し」が行われます。
「祷渡し」は「当番渡し」のことで、次の宿(当番)にその務めを渡す儀式です。
今年の宿の夫婦は下座に、来年の宿の夫婦は上座に座り、三三九度の盃を交わします。
当番の方が御神酒を飲むと「高砂(たかさご)」というお祝いの歌を歌います。
「高砂」には第20課までの歌がありますが、第9課は歌える方が少なくなってきており、
赤坂常会の先輩が第9課を歌った際には、その声に耳を傾けていました。
今回は来年の宿の夫婦が来られなかったため、赤坂常会の若者が代役を務めました!
次は「八皿の儀」です。
八皿の儀は7つの皿に御神酒を注ぎ、大きな皿にその御神酒をまとめて飲み干す儀式です。
今年の宿の方から順に出席した方々が飲み干していきます。
この時に回された御神酒は、女神のジンジョ様にお供えしていたもので、
女性の参加者にその御神酒を回してしまうと女神が嫉妬してしまうので、
女性の参加者には男神にお供えした御神酒を回します。
さぁ、いよいよ奉納に向かいます!
幸坂さん宅から外に出ると……
なんと、隣の常会と鉢合わせ!!
出会ったのも束の間、早速お互いのジンジョ様を合わせます!
常会によって奉納に出発する時間が違うので、合わせる場面を見ることができるのは
とても珍しいのだそうです! すごい場面を見ることができました~!
ジンジョ様を合わせた時に壊れないように作ることが、その常会の結束力の表れなのだそうです。
興奮冷めやらぬ中、笛を吹き、太鼓を打ち鳴らし、赤坂常会を練り歩きます。
練り歩きの途中、雪の上にぽつんと笹の上にご飯を乗せたものが置かれていました。
これは無病息災を願い、家の門の下に置いておくものなのだそうです。
今ではなかなか見かけることが少なくなった風習です。
……ん!?
あの人影はもしや……
先ほど鉢合わせた常会とは別の常会の方々と鉢合わせです~!
こちらの常会では、もう奉納した後だったそうですが、2回も鉢合わせするなんてすごいですよ!
赤坂常会の御堂に着くと、もう日が暮れていました。
御堂にジンジョ様を祀り、屋根に細いしめ縄をくくり付けます。
ここで高砂を歌い、奉納が完了します。
奉納後には、出席者に塩と紅白なますが配られました。
そして、次の宿を務める方のお宅へ引き継ぎに向かい、
「ジンジョ様祭り」の夜は更けていきました……。
ジンジョ様には「作る人の思いが込められている」と地域の方が話してくださいました。
お祭りを楽しみながら、地域の方は「生まれたところ(山田)が一番良い」と呟いていました。
地域に根付く伝統行事は、人々の心も地域に結びつけています。
以上、祭りの熱冷めやらぬ山田地域からお届けしました!