画像:産婆「武田ナカ」

  仙道地域を支えた産婆「武田ナカ」

  明治生まれの武田ナカは、仙道地域で数百人の赤ちゃんを取りあげた腕利きの「産婆」でした。「バッパ」と呼ばれて親しまれ、親子3代にわたって取り上げてもらった家もあったと言います。
 

 ナカが15歳の時に、実母から弟を取り上げたのが産婆人生のはじまりです。その産婆術は小安観音への強い信仰心に基づいて、「藁を2束分産床に敷き、産婦を座らせ、後ろから腰抱きにして、赤ちゃんを下げていく。」といった方法が伝えられています。

 普段は髪結いなどの仕事をしながら、弱い立場に置かれたお嫁さんたちの話を聞き、助言して励ましていたと言います。1月15日の小正月にはナカにお世話になった母子が、のし餅を3枚持ってお礼参りに行く習慣がありました。多い時は何十人と集まり、家中、餅だらけになったと言います。ナカは母子を歓待し、ご祝儀をあげていたそうです。

 昭和32(1957)年で産婆をやめた後も、地域の子どもたちを集めて民話や歌を聞かせて楽しませたと言います。ナカは87歳の天寿を全うしましたが、仙道地域の新処集落の児童公園には今も頌徳碑(しょうとくひ)が残り、静かに仙道地域の母子を見守っています。

 
平成28(2016)年3月掲載
令和3(2021)年3月更新
 
 
■参考文献
武田憲一『仙道番楽一代記』
武田保夫『祖母の産婆術』

こちらの記事もおすすめです

地蔵院

 仙道地域を見守ってきた寺院・地蔵院。元亀元(1570)年、羽後町・堀回地域にある西蔵寺の附岩泉誉和尚によって開基されました。    境内に入ると、朱塗りの立派な門が目を引きます。宝永元(1704)年に建立された2階建ての...

歴史

神社・寺

祇園山スキー場

 羽後町には「五輪坂スキー場」と「祇園山スキー場」、2つのスキー場があり、仙道地域の南、上仙道地区の約束沢集落の入り口にあるのが祇園山スキー場です。昭和51年(1976年)につくられた祇園山スキー場の隣には、当時の上仙...

自然・施設

体験施設

「凍み大根」作り

  羽後町の仙道地域では、有志グループ「GBビジネス仙道支部 郷山の会」が、令和元(2019)年から、凍み大根を商品化しようと、本格的に凍み大根作りに取り組んでいます。凍み大根は、厳冬期に家の軒先などに大根を吊して干す...

地域活動

GBビジネス