農民たちの土地

 由利本荘市笹子(じねご)地域を含む、旧矢島町・旧鳥海町一帯は戦国時代から江戸時代初期にかけて、戦乱、領地替えなど、支配者の交替が頻発します。江戸時代には、藩主が江戸定府(参勤交代せずに江戸で執務をする)のため、藩を一手に治めた代官が重い年貢を課しはじめます。さらに重臣たちの権力争いも始まり、農民の暮らしは一向に楽になりません。

 やがて、争いに勝ち実権を握った家老たちは力づくで、年貢の取り立てを始めます。

 ここに及んで、農民たちは遂に抵抗を開始し、自分たちで立ち上がります。出せないものは出せないと、山奥に小屋をかけて隠れる者、荷物をまとめて逃げ去る者が増えていきます。

 各集落の肝煎(庄屋)たちが集まり、このままでは農民たちが消えてしまうと、藩主への直訴を行いました。その中心人物、仁左衛門は、藩主からの年貢を軽くする朱印状をもらうことに成功するものの、家老たちの罠の前に朱印状を奪われ、最後は罪人として殺されてしまいます。これが「延宝の農民騒動」です。

 笹子のみならず矢島藩全体を巻き込んだ騒動は、義民たちの犠牲の後、それでも年貢を取り立てようとする家老たちに対して、農民が頑強に抵抗したことによって、ようやく実際の石高に基づいた年貢に戻すことで和解します。

 次々と入れ変わる為政者たちから、農民たちが命をかけて守った歴史があるからこそ、上笹子の住人たちは誇りと愛着を持って「自分たちの土地」と呼ぶのです。

平成22(2010)年12月掲載
令和4(2022)年3月更新

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