おいしいお話

繋がりが変える、秋田の食文化

2021年11月30日

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秋田県にかほ市にあるフレンチレストラン「レメデニカホ」。ここでは、2018年のオープン以来、地元食材を活かした料理を提供し続けています。

最高の食材を求め、にかほ市はもちろん、秋田県内各地を巡るオーナーシェフの渡邊健一さん。秋田米の新品種「サキホコレ」にも一目を置いているといいます。

 

「フレンチでお米?」どこかかけ離れた印象すらありますが、渡邊さんが見るサキホコレの魅力とは、どんなものなのでしょう? そして、お話を伺う中で、秋田の食文化の可能性も見えてきました。

「レメデ」とは「自然の力で治癒する、癒す」の意。自然豊かな土地から、美味しさ、楽しさ、健やかさを作りたいという思いから名付けられた。完全予約制、現在は席数を絞って営業中。ランチ、ディナーそれぞれにコースメニューが用意されており、ソムリエによるワインとのペアリングなども楽しめる。

 

【これまでの米とは違う!】

 

フランス料理では主食はパンなので、米は使わない印象があるかもしれませんが、実は、米は野菜の一つと考えられているんです。これまでも、さまざまなメニューに地元の酒蔵の酒米や地元農家の米を使ってきました。

 

そんな中、今回、秋田米の新品種ができると聞いたときに、正直、「必要なのかな?」と思ったんです。それは、食文化に限らず言えることですが、自分は「新しいものを作るより、今あるものを磨いていったほうがいいのでは?」と思うんですよね。

 

ところが今回、サキホコレを試食させてもらったら「これまでの秋田の米とは違う!」と驚いたんです。サキホコレは、粒感がしっかりあって粘りが強すぎないから、ほぐれやすいうえに、米の旨味もしっかり感じられる。

 

洋食では、基本となる米に味を重ねていく調理が主体なので、粘りというのは、ときに料理の邪魔になってしまうこともあるんです。そういう点で、サキホコレは洋食屋さんでも活かしやすい。個性的で可能性を感じました。

サキホコレを使用した料理を提案していただいた。「サキホコレとズワイガニのスフレ」。にかほ市産の魚介のスープで炊いたサキホコレをカニと一緒に生地で覆いオーブンで焼き上げたもの。米粒が際立ちつつ、しっかりと旨味を含んでおり、この米の持ち味が生かされている。今後、ランチメニューでもサキホコレの使用を予定している。

 

【秋田を意識させた、生産者の存在】

 

私はもともと潟上市出身ですが、この店をはじめる以前は、東京の銀座や青山、赤坂、フランスのパリなどのフランス料理店に計20年ほど勤めていました。

そこは「一流のものを目指す」という環境で、美味しい食材を求めて全国に目を向けていました。当時は、秋田の食材が首都圏に出てくることがまだ少ないこともあって、秋田を意識するパーセンテージは小さいものでしたし、当初はフランスに店を持つことすら考えていたくらいでした。

そんな中、秋田に戻ろうと決めたきっかけの一つになったのが、生産者さんの存在でした。彼の食に対する考え方や、食を通して発信したい思いに、とても共感したんです。

 

「食は人を作るもの、世の中を作るもの」ということから「食を通して、人間とはどうあるべきか」というところにまで及んでいくんですが、でも、それを個々に伝えていくのはとても難しい。

ならば、彼は食材を作る係、こちらは料理を作る係、というような役割分担をしながら伝えていけたら……と思うようになったんです。

そこからですね、秋田に注目するようになったのは。「秋田の生産者さんって、こんなにがんばっているんだ」と、秋田全体が見えるようになっていきました。

 

秋田に戻ってからは、レストランで料理を提供するほかに、「たべあきない食べる通信fromあきた」という情報誌の編集にも携わって、毎号一つの食材を特集し、生産者の声とともにその食文化を紹介してきました。(現在は休刊中)

「イチジクのキャラメリゼ、フォアグラのポワレ、大根のブレゼのミルフィーユ。」にかほ市産のイチジクと大根を使用。器は秋田市の作家によるオリジナル。イチジクをイメージして作られた。

「象潟鮭のミキュイ、セリのソース」。地元食材と全国の厳選素材をかけ合わせて素材の魅力を最大限に引き出すのがレメデニカホの最大の魅力。

 

 

【生産者と飲食店の繋がりを】

 

食文化を作るのは、まずは生産者や飲食店からの発信からだと思うんです。

秋田に関わるようになったばかりのころは、オーガニックや生産者の取組への意識というのは、ある一部にしか届かないことだろうと思っていました。

 

ところが、時代が追いついたからなのか、秋田の人たちのがんばりからなのか、ここ数年、生産者の個々の思いや取組を理解して提供しようという飲食店が徐々に増えてきたように感じます。

 

料理を作る人と生産者がもっと繋がって、お互い助け合う。連携していく。「あの農家の野菜や米はこうなんだよ」と、飲食店が生産者をPRしていったり。秋田の食文化は、そういう繋がりから変わっていくんじゃないかなと思います。「美味しい」を伝える人がたくさん現れてくれたらいいですね。

 

最近は、流通も変化して、良い食材が消費者に直接届けられるようにもなってきました。

昨年末、うちの店では、一年の締めくくりとして、秋田県内各地の生産者さん20軒をフィーチャーして、その食材を使った料理に生産者さんの情報を添えて地方発送するという「料理ボックス」を企画したんですが、実は、今年はそこに、サキホコレを入れられないかと考えているんです。サキホコレに食材を組み合わせて一緒に炊いてもらうようなキットを想定しています。

 

各地に素晴らしい食材がありますが、「お米の県の象徴」という立ち位置で、サキホコレを紹介できたらと思っています。

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