おいしいお話
おいしいお話
2020年01月15日
毎年8月3日から6日までの4日間、秋田市で開催される「竿燈まつり」。
国の重要無形民俗文化財に指定されており、東北三大祭りの一つともされています。
竹竿に提灯を吊るし、稲穂に見立てた竿燈を、手、額、肩、腰などでバランスをとりながら支え、災厄払いや五穀豊穣を願います。
この、米どころ秋田ならではの祭りを、妙技で盛り上げる人たちと、裏方として仲間を「食」で支える人たち、それぞれにお話を伺いました。
「竿燈が終わらないと夏休みが始まらないんです。」
~馬口労町竿燈会・囃子方 椎名璃音さん、竹島悠さん~
左:椎名璃音、右:竹島悠さん
「囃子方」は、太鼓と笛に分かれるんですけれど、私たちは小学校5年生から、ずっと一緒に大会にも出場してきました。
お囃子の練習期間は、7月上旬から始めて約1ヵ月くらい、毎日1時間練習します。今、高校2年生なんですけど、私たちの夏は竿燈を主軸に回っているので、竿燈が終わってはじめて「あ!宿題やらないと!」ってなるんですよ(笑)。私たちは、竿燈が終わらないと夏休みが始まらないんです。
やっぱり、2人で演奏しているときが一番楽しいですね。もう、息が合ってるので。2人の世界に入ってしまって暴走しちゃうこともあったり(笑)。今年は7月にあった、23歳以下のお囃子の大会で優秀賞をいただきました。
町内の人たちには小さい頃からお世話になってるので、年の差も関係なく、みんながお姉ちゃんであり、みんなが妹みたいな関係ですね。
最終日はとくに楽しいよね。「もうこれで終わっちゃう!」っていう焦りと楽しみが入り交じって。妙技会(※)で優勝した年なんかはもう、弾けちゃって、ヤバかったね!
※妙技会……技術の向上や保存のために開催されており、差し手の団体戦、個人戦、囃子方に分かれ、基本演技の忠実さ、安定、形の美しさなどを競う大会。
「ベテランに近づきたいんです。」
~馬口労町竿燈会・差し手 伊藤隆一さん~
竿燈まつりには、16歳から欠かさず出ています。今年は妙技会の団体戦に出場するんですが、ベテランの中にポツンと一人入れられてしまって。プレッシャーですね。普段の仕事とまつりの練習の両立が難しくて、練習できる時間も限られてますし……。
開催当日は、演技を見てお客さんに「わー」っと盛り上がってもらえると、エンターテイナーになったような気分になれるんですよね。
自分は、肩で上げるのが得意なんですけど、肩は一番安定しやすい場所で。いろんなパートを完璧にして、ベテランに近づきたいんです。
うちの町内のベテランはみんな、憧れの人だらけですね。過去の妙技会で優勝している人もいますし、技術はダントツ、うちの町内が一番なんじゃないかなって思いますよ。この町内にいられてよかったなって、いつも思ってます。
「ぶーぶー言いながらも、楽しいのがお祭りなんですよね。」
~馬口労町 椎名友子さん、椎名愛子さん、椎名信子さん~
今作ってるのは、たらことぼだっこ(塩鮭)のおにぎり。今日は2種類。これは、今日の演技を終えて町内に帰ってきたみんなに食べさせるように作ってるの。
町内の何軒かに分かれて作ってるんだけど、うちは1升5合炊いたかな。ほかの家でも2升くらい炊いていたから、1食で4升くらいかな。うちの町内は50人以上参加してるからね。お米は、私の実家が農家だからそれを譲ってもらってるの。
出発前のごはんは、毎年、焼肉丼とか、うなぎとか、カレーとかね。帰ってきてからのごはんも含めて、毎食何を出すか考えて、作って……。
嫁にきてからは、こうしてずっと裏方担当なの。裏方だって忙しくて、4日間の祭りがあるでしょ、日増しに機嫌が悪くなるの(笑)。
でも、この手作りのおにぎりが好評でね。私たちも高齢化してきたので、でき合いのものを用意した年があったんだけど、みんな「これじゃダメだ」って言うの。やっぱりいつもの手作りのが美味しいって。そう言われちゃうと、がんばらないといけないじゃない。
祭りに参加している人たちは、祭りが近づくにつれて日に日にテンションが上がっていくんだけど、裏方の私たちは「ああ、またこの日がくるのか……」って感じ(笑)。でも、当日になってお囃子が聞こえてきたりすると、やっぱり楽しいのよね。
子どもが小さいときは、抜け出してまつり会場に見に行ったりもしていたけど、最近は戻り竿燈(町内に帰ってからの演技)を見るくらい。旦那よりも子どもの姿が楽しみなのよ。よその家の子どもでも、成長もみえるし、だんだん頼もしくなっていったりね。泣きべそかいてたあの子が、先陣きって竿燈上げてたりしてね。
ぶーぶー言いながらも結局は盛り上がるし、楽しいのがお祭りなんですよね。