おいしいお話
おいしいお話
2020年01月15日
大仙市強首の「農事組合法人強首ファーム」は、法人化して約10年。現在は、24名の組合員がおり、水稲のほか、大豆、野菜、花きなどを栽培しています。
10月初旬、稲刈り真っ最中のところに訪ねると、この日はちょうど、みなさんで圃場の前でお昼ご飯を食べる予定とのこと。美味しいおむすびをいただきながらお話を伺います。
農事組合法人強首ファーム 代表理事の小山田和人さん
私は、かつては専業農家で30年~40年、個人で営農していました。そのころは自分のところをやるのだけでアップアップでね。
今は、機械化をしないとできない時代。大豆を作るってば、大豆用のコンバインや消毒用の機械も必要で、小さくても500~600万はかかってしまう。機械を揃えて、あれ引いて、これ引いて……ってば、儲けはほとんど残らない、という状況。そうなると個人での対応は無理になってしまうし、子どもにも「農業をやれ」とは言えなくなる。
現在手掛けている品種は、「あきたこまち」「ゆめおばこ」「秋のきらめき」「ちほみのり」。この土地は、雄物川が蛇行しているところにあるため、頻繁に川が氾濫してきたが、そのため、栄養分が溜まり肥沃な土を作ってきた。
この日は、数日前に収穫したばかりの、「秋のきらめき」と「ちほみのり」を組合員で食べ比べ。
そんななか、農林水産省で集落営農を推奨するようになって、法人育成に対する補助金も出たりしたんです。そこで、後継のことも考えて「チャレンジしてみるか!」と。これからはこうしていくしか道はないかもしれないなとも思ってね。
10年前に「農事組合法人強首ファーム」を設立しました。こうして組合を作ることで、きちんと社会保障をつけることもできて、基本は8時間労働。土日は休みにしています。
立ち上げたときに、最初に95馬力のトラクターを買ったんですよ。こんな機会でもないと、そんなに大きいものなんて買えないだろうし、「明るい農村」じゃないけど、一人では無理でも全員でやればできるっていうことの象徴として。
それに、若い人の中には、「せっかく農業をやるなら大きな機械に乗りたい」っていう人もいる。若い人材に加わってもらうには、「従来の農業とは違うんだ」っていうところを見せていかないと。実際、組合で1台買うことで、みんなの分がまかなえるようになりました。
組合員のなかには、普段はふつうに勤めに出ていて、「今日は稲刈りがある」っていえば、仕事を休んで出てきてくれる仲間もいる。
そうすると、万が一、誰かが具合が悪くなっても心配が少ない。「頼む」っていったときに来てもらえる、プラスアルファの労働力があるっていう安心感があるんですよ。
野菜も8~9品目やってるけども、規格外で出荷できないものもある。それは組合員で分けて「これ作ったけど、食べるか?」って持ち寄ったり。今日みたいに同じもの食って「あれがうまかった」とか言いながらな。そのほうが健全で、気持ちにもゆとりがあって、いい感じだな。
転作大豆っていうのも、以前は、「大豆を作ります」っていうよりは、「米を作らないため」にやっていたんだけども、今は積極的に良い大豆を作るようになってきています。消毒や病気の対策をきちんとやれば、一等大豆、二等大豆がけっこうできるようになる。そうすると、それに対する奨励金ももらえるようになる。そういうのが、みんなのやる気に繋がるんだ。
こういう形は、農業をやっていくうえでの選択肢の中の一つかもしれないけども、今のところはよりベターかな、というふうに感じます。これからは強首地区全体を一つのファームにしていったら、高齢の人にも女性にも雇用機会が出てくるんじゃないかと思うんですよ。
それに、このあたりでは、土地の貸借や買ってもらいたいというところも増えていて、中には「家までもいらない」という人もいる。それをそのまま荒らしておくのもよくないので、作物を植えて維持していくべきだと思うんだ。これから、そういうケースがどんどん増えてきて、そうなるともっと人手も必要になってくる。
そのためにも、若い人をフォローしていかなければな。いま主力になってるのは、会社を定年退職した我々くらいの層。いまは仲間にも恵まれているけれど、次の世代になったとき、彼らにも仲間たちがいればいいんだけどもな。同じ世代で仕事して、酒飲める仲間がいれば、我慢する部分は我慢できるし、仲間のためにもがんばるかって思えるんだよな。
これからの世代がどうなるか……。雪は降る、店もない、病院も離れてるってばなあ。外からここに来るっていう人はそういない。でも、景色はいいし、空気もいい。こういう場所もいいなって思う若い人たちが就農しやすくなるように、保障もきちんとしていかねば。
それから、米ばかりでなく、伝統野菜の「強首はくさい」とかいろんな野菜も作っているので、その野菜のうまさっていうのを、これからの子どもたちに覚えていってもらいたいのよ。野菜の鮮度とうまさっていうのは、地元で、穫れたものを食べるっていうのが一番、安心安全なのよ。そういうものを、次の世代に継承していければなって思っています。