おいしいお話

新品種誕生の裏舞台

2020年06月25日

    全国的に良食味品種が続々と誕生し、ブランド米市場は正に百花繚乱の様相を呈していますが、華々しい新品種デビューの裏には、長い時間と労力のかかる地道な作業があります。ここでは、県農業試験場における品種開発の流れをご紹介します。

    1.母親(雌しべ)の準備
    新しい品種を開発するためには、人工的に他の品種の花粉を母親となる品種の雌しべにかけて、受粉させますが(交配)、放って置くと稲は開花ともに自分の花粉で受粉してしまいます。

    そこで、母親となる品種の花を、43℃のお湯に6分間つけ、花粉を働かなくします(温湯除雄法(おんとうじょゆうほう))


    母親となる品種の穂をお湯につける温湯除雄法

     

    次に、母親となる品種の穂には、既に自分の花粉で受粉してしまった雌しべがありますので、これを花(えい花)ごと一つ一つ丁寧に取り除きます。


    自分の花粉で受粉したえい花(雌しべ)を手作業で取り除く

     

    2. 父親(花粉親)の準備
    父親になる品種の穂は交配当日の朝8時ころにはほ場から摘み取ります。水に活(い)けて、花粉が飛ばないよう密ぺいされた温室内に置き、開花を待ちます。通常であれば、11時頃から開花しますが、天気が悪いと午後2時を過ぎることもあります。


    稲の開花の様子

     

    3.交配
    父親の穂の根本を持ち、母親の花に近づけて、そっと小さく振ります。花粉が飛んで、母親の花に降りかかれば交配はひとまず成功です。この作業中に風が入ると、花粉が飛散してしまうので、閉めきった部屋で風を起こさないように作業を進めます。夏の暑い時期の作業なので、とても大変です。


    左が父親(花粉親)、右が母親

     

    4.世代促進と選抜
    交配後、数少ない種籾が実ります。これを温室内で大切に育て、世代を進めて、種籾を増やします。その種から育てた苗を一本ずつ手植えして栽培し、秋にはまた一本ずつチェックしながら新品種候補となるイネを複数選抜します。

    その後数年間は高温や病気への耐性試験、食味試験などにより勝ち抜き戦が行われ、収量性や耐病性、成熟期(早生、晩生等)など、より育種目標に近いイネだけが勝ち残ります。例えば、「秋系821」の場合は約12万株もの中から選抜されました。

    このようにして毎年膨大な数の交配種を育てていても、新品種になるのは数年に1品種程度ですし、実際に農家さんが作付けして市場に出荷されるまでには、実に10年以上かかります。


    一本ずつの手植え


    一本ずつのチェック


    食味試験による選抜の様子

    食味試験による選抜の様子

     

    令和4年のデビューを目指す新品種「秋系821」は、平成22年に「中部132号」を母親に、「秋田97号(つぶぞろい)」を父親に交配され、徹底的に食味にこだわって選抜された品種です。

    「秋系821」は、「コシヒカリを超える極良食味品種」をコンセプトに、食味に徹底的にこだわって開発されました。両親の持つ良食味の特徴を引き継いでおり、「白さとツヤが際立つ外観」「粒感のあるふっくらとした食感」「上品な香り、かむほどに広がる深い甘み」が感じられるお米です。
    また、栽培上の特徴としては「あきたこまち」より成熟期が12日程度遅い晩生種で、収量は「あきたこまち」並です。いもち病に対する強さは母親譲りで、高温や低温による品質低下も少ないという特性を持っています。


    秋系821のデビューをお楽しみに!

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