湯沢市小野地域に、秋田県の「農聖」と呼ばれた石川理紀之助が「師」と仰いだ人物、高橋正作(1803~1894)が暮らした家があります。
高橋正作は、江戸時代末期の小野地域の肝煎(村長)でした。天保の大飢饉(1833~1839)に襲われた村を、私財をなげうって救済し、ついに一人の餓死者も出すことなく飢饉を乗り切ることができました。
それだけで終わらないのが正作です。再びの飢饉に備え、村人たちの貧しい暮らしを救うべく尽力しました。近くにある「院内銀山」への木炭の提供により、住民の収入の安定、飢饉の際の収入源としたのです。木炭不足に悩み、閉山寸前だった院内銀山も息を吹き返し、まさに一石二鳥となったのです。
そんな折、19歳の石川理紀之助、後に「農聖」とまで呼ばれる彼が正作の元を訪れます。このときの交流が、理紀之助が農業に一生をささげる転機となったと言われています。晩年になっても、理紀之助の求めに快く応じ、正作は県内各地を回り、農村の救済に尽力します。また、県下最大級のイベントである「種苗交換会」の土台作りにも理紀之助と共に携わりました。
現在も小野地域に残る高橋正作の家は、内部に当時の肝煎の家らしさを残しており、秋田県の農業の発展に尽くした偉人の姿を今に伝えています。
■参考文献
『村守る、命かけても』簗瀬 均
『高橋正作の家 説明看板』
【アクセス】高橋正作の家
●住所:秋田県湯沢市桑崎中泊10
道の駅おがちより、国道13号線沿いを湯沢・横手方面へ走ると車で約5分
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