９月から今年度後半のシリーズがスタートしたばかりの『第３回秋田･潟上国際音楽祭２０２４』、９月6日・７日（金・土）の２夜にわたるチェロとギターの響演を心から堪能しました。
演奏は水谷川(みやがわ)優子さん(チェロ)と鈴木大介さん(ギター)のジョイント、この楽器の組み合わせも演奏された曲目も共にめずらしい内容が含まれており、新しい音楽体験と発見ができてとても楽しめた演奏会でした。

チェロの水谷川優子さんは、指揮者・小澤征爾さんも在籍していた桐朋学園女子高等学校音楽科を卒業後、オーストリアの名門・ザルツブルグ・モーツァルテウム音楽院を何と！首席で卒業、その後ヨーロッパを中心に活躍されてザルツブルグ室内管弦楽団の首席奏者等を歴任、また数々のコンクールでも優勝しています。昨年の音楽祭にも出演されていたそうですが、私が水谷川さんの演奏を聴くのは今回が初めてでした（使用楽器：Enrico Rocca 1906年、イタリア製）。
ギターの鈴木大介さんは、作曲家の武満徹さんから「今までに聴いたことがないようなギタリスト」と評されたというエピソードがとても有名ですが、やはり世界的コンクールで優勝され、発売されたCDは４０枚以上に登っており、国内ギター奏者のトップクラス（とりわけ武満徹作品の演奏・編曲等）、私は首都圏に在住していた頃に数回演奏会を経験していました。

この二人が秋田で演奏会をされるということ自体とても貴重なこと、そしてこの珍しい２つの楽器によるジョイント演奏で名曲・シューベルト「アルペジョーネ･ソナタ」、そして水谷川優子さんのバッハ・無伴奏ソナタ２曲、鈴木大介さんの武満徹編曲による１２の歌(抜粋)等歴史的にも重要な演目が、アトリオン・ホールと潟上市・ブルーホール(小玉醸造が運営)の２箇所の素晴らしい音響空間で体験できた！という点も大きなポイント。また、この音楽祭実行副委員長である秋田県出身・佐市さんの作曲による２つの楽器による組曲「水面鏡」の世界初演も行なわれ、魅力満載の演奏会でした。

この演奏会は「音楽の交差点」～バッハ、国境を越える300年の旅～と題した2日間。一日目はアトリオンホールで、まず水谷川さんの演奏で「バッハ：無伴奏チェロ組曲 第1番」。その深々とした第1音が鳴った瞬間にホールが神聖な凛とした空気に包まれました。演奏会後のある番組で紹介されたのですが、ドイツ在住で北欧の島に別荘があり、その素晴らしい環境も素晴らしい音の由縁だなあと腑に落ちました。続いて「シューベルト：アルペジョーネ・ソナタ」、この2楽器による演奏は初体験でしたが、やはりヨーロッパの落ち着いた雰囲気を表現していました。休憩後は鈴木大介さんが超稀少な特注の8弦ギターで、自身の編曲による「バッハ：リュート組曲第2番」を鮮やかに弾き切りました。
二日目はブルーホールで、最初の曲は鈴木大介さんが「武満徹：ギターのための12の歌」より4曲。この武満さんのポピュラー曲はどの曲も素敵な編曲がされており、できれば全曲聴きたいと思いました。
続いて水谷川さんが「黛敏郎：文楽」という珍しい曲を弾き、そして「佐市：組曲「水面鏡」-チェロとギターのための-」(世界初演)が披露されました。後半は水谷川さんが「バッハ：無伴奏チェロ組曲第3番」、その後小松亮太、ピアソラのタンゴそしてアンコールが演奏されて充実した演奏会は終了しました。

二人は偶然ザルツブルグで共に勉強したことがきっかけで出会い、しばらく後１０年以上前からジョイント演奏を始めたそうで、曲間の会話も流暢で楽しく、また音楽関連の裏情報も聞けたりと本当に楽しく満たされた演奏会でした。近いうちにまた是非秋田で演奏会を行なってくれることを、切に願います。

この『第３回秋田･潟上国際音楽祭２０２４』、今後の演奏会は音楽祭実行委員長・千田桂大さんのピアノとオーケストラのコンチェルト、潟上市委嘱作品での地元中学校吹奏楽との合同公演、須川展也（SAX) の４０周年記念コンサートや若手注目株のピアニストたち初来日公演等が目白押しです。
また、秋田県にはミルハス・アトリオン・ブルーホールはじめ、素晴らしい音響のホールがあり、その点も誇れる事だと思うので、音楽文化を盛り上げていきたいですね。

秋田在住の皆様、そして秋田から発信するこの国際音楽祭を応援していただける皆様、是非この秋の演奏会に足をお運びください。

※『秋田・潟上国際音楽祭』公式サイト： https://www.akimf.com/
　　水谷川優子さん(チェロ)公式サイト： https://yuko-miyagawa.com/
　　鈴木大介さん(ギター)公式サイト　： ギタリスト | Guitarist ｜Daisuke Suzuki | 鈴木大介｜クラシックギター｜ギター｜ホームページ｜HP