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語りを聞く

八木澤マタギを語る会 佐藤良美さん

画像:八木澤マタギを語る会 佐藤良美さん

 2009年、長年八木沢集落で伝統マタギを継承してきた佐藤良蔵さんの三男にあたる良美さんは、2年前から2回にわたり、10月15日を心に決め、秋田市の公民館で「八木澤マタギを語る会」を開きました。現在は「八木沢」の地名ですが、明治の初めに集落に祀られた山の神様に「八木澤村」と表記され、八木沢マタギの発祥地、山の神に畏敬を込め「八木澤マタギを語る会」と名付けたと良美さんはいいます。

 「八木澤マタギを語る会」では、ご自身が収集した集落の貴重な狩猟用具や集落最後のマタギが射止めたバンドリ(ムササビ)などの剥製も展示されました。現在、秋田市に在住する良美さんは、ふるさとに対する深い思いを長年抱き続けてきました。自宅には八木沢集落の上流、萩形渓谷で家族と撮影した写真が飾られ、「良蔵マタギ引退 八木沢集落 最後のマタギ 静かに銃を置く」と自ら思いを込めて彫った置物がおかれています。

 良美さんは、子供の頃に良蔵さんが射止めたクマの肉を集落の家々に配り歩いたことを今でも忘れないといいます。子供がクマの肉を配って歩くのは集落の風習でした。寡黙でたくましいマタギだった父親の記憶。八木沢では狩りに行くことを「マタギに行く」といいます。冬、30kg以上の重さのソリを背中に担ぎあげ、急斜面を難なく歩く良蔵さんの姿を見て、良美さんは「マタギは根本的に普通の人と違う」と、畏敬の念を抱いたそうです。

 そんな良美さんが、行動を起こすきっかけとなったのが、マタギの命ともいえる猟銃を良蔵さんが警察署に返納したことでした。「鉄砲を辞める」……そう話していた良蔵さんが、実際に引退した姿を見て、「八木澤マタギを後世に語りついでいきたい」と決意します。集落に残されたマタギの資料を集め、良蔵さんだけでなく、八木沢の家々を一軒一軒訪ね歩きマタギの逸話などを調べ始めました。

 良美さんの先祖は、北秋田市・根子集落のマタギ組織の組頭・善兵衛から200年ほど前に分家した子孫で自身のルーツでもある根子を何度も訪れ、根子マタギのシカリを務めた佐藤冨久栄さんや戦前・戦後にわたり、八木沢集落のマタギと共同で狩りをした佐藤國男さんからも昔のマタギの話を聞きました。マタギの足跡を追っていくうちに、良美さんは「マタギはこのまま消えていくのだろうか」……そんな思いにかられることもあるそうです。しかし、それでも「歴史は残すべきだ」と良美さんは考えます。父やマタギたちの背中を見て育ったからこそ、「本物」を語り継いでいきたい。良美さんは、歴史を語り継ぐ土台作りのために各地に散らばった「八木澤マタギ」の足跡を追いかけています。

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八木沢マタギの狩猟道具が上小阿仁村の文化財に指定(2012年9月掲載)

2011年6月掲載

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