岩崎八幡神社の本殿裏手にある水神社のさらに裏手に入っていくと、大木の下に厳めしい表情を携えた、藁作りの巨大な人形が鎮座しています。
この人形は「鹿島様」と呼ばれ、疫病や悪者など、地域の人々に悪影響を及ぼすものを地域の中に入れないように地域を見守る人形道祖神です。鎧を着け、剣を携えた姿は、武神(いくさがみ)を象徴していると言われています。
岩崎地域には町内が9つあり、鹿島様を祀っているのは末広町、栄(さかえ)町、緑(みどり)町の3町内です。かつては各集落の入り口に鎮座していましたが、地租改正(1873年に明治政府が行った租税制度改革)後に現在の場所へ移されました。
現在は、水神社の裏手に栄町と末広町の鹿島様、国道13号沿いに緑町の鹿島様が鎮座しています。どの鹿島様も、それぞれ見守る地域の方向を見据えています。
鹿島様の伝統は数百年前から伝わっており、毎年春と秋に祭典を兼ねて鹿島様の体を造る行事が伝わっています。
末広町の鹿島様は、劣化を防ぐために平成25年(2013年)に地元の大工さんから屋根を掛けてもらったため、春に体を造り替えるのみでよくなりました。ちなみに、鹿島様の木彫りの面は、屋根を掛けた大工さんのお父さんが造ったものです。
末広町の鹿島様は東京都渋谷区、千葉県、宮城県などへ、出張展示に行ったことがあり、町内からは鹿島様造りの技術を持った方が数名で出張し、皆さん誇りを持って帰ってきたと、地域の方が話していました。
鹿島様造りには、先人たちの生活の一部であった縄綯いの技術が集結しています。米俵を造る技術は鹿島様の頭部に、米俵のフタの技術は胸やおへそに……と鹿島様を通じて、近年行われなくなってきた稲わら文化が受け継がれています。