本文へスキップ

語りを聞く

冬師集落伝統細工制作グループ 代表 佐藤クニ子さん

画像:冬師集落伝統細工制作グループ 代表 佐藤クニ子さん


「クニ子いたか~」と玄関からひびく声の主に対し、「いたよ~」と返事をかえすのは、冬師(とうし)集落伝統細工制作グループの代表を務める佐藤クニ子さんです。「これくらいでいいべか?」と、同グループのおばあちゃんは、自分が制作した「草鞋(わらじ)」の出来具合をクニ子さんに確認します。全国的にわら細工職人が減る中で、今も制作をおこなっている同グループには県内外から途切れることなく、わら細工の注文が入ってきます。
 
 「今はわら専門だね」と話すクニ子さん、雨合羽が普及する前は「蓑(みの)」の制作も行っていました。グループでは、各メンバーが材料の藁を購入し、一年を通してわら細工を制作しています。代表を務めるクニ子さんは、サンプルとなる見本があれば、見よう見まねで制作し、発注者からOKをもらってから、各メンバーに制作を依頼しています。一つの企業から一括で草鞋800足ほどの注文を受けることもあります。サイズもSSからLまで幅広く、特に小さなサイズは神経を使う細やかな作業だといいます。発注する企業からも「わらじは大変。よく作る」と褒められるそうです。
 
 クニ子さんのわら細工作りは、母親が制作して失敗したわら細工を、ほごし(分解し)作り直したのが始まりです。師匠という存在はなく、全て見よう見まねで覚えてきました。わら細工の制作で心がけているのは「急がないこと」だと言います。後々まで残るものなので、大量の受注があっても、ただ早く作るのではなく「綺麗なものを作ろう」と心がけています。クニ子さんは「やると決めたら徹底してやる」性分です。にかほ市の文化祭に出品した「蓑」では金賞を、仙北市の平成縄綯塾が主催する「全国縄綯大会」では、美しい縄を綯った人に送られる「アート賞」を受賞しました。民謡の全国大会で2度も優勝した経験があり、「手を抜くことができないの」と苦笑するクニ子さんは「まだまだがんばれる」と話します。
 
 クニ子さんは集落内を散歩することを日課にしています。わら細工作りは、長時間、足を伸ばしたまま作業するので、太ももの裏が痛くなり、腰も曲がりがちです。「大した用事が無くても歩くようにしてるの」。そして散歩しながら、友人やメンバーの家に立ち寄り「どれくらいできた~?」と毎日、仲間に声をかけています。
 
 冬師集落のわら細工を知ってもらおうと、クニ子さんはグループのメンバーと冬師自治会と協力し、秋田市、横手市、男鹿市、さらには県外の東京にも足を運び、秋田県のイベント会場でわら細工作りの工程を披露してきました。さらに、地域外の人々に、わら細工体験の場も設けています。「小学生くらいの子が上手いんだよね。あっという間に作っちゃうの」とクニ子さんは子どもたちの上達の早さに感心しながら、わら細工の「教える人」としての楽しさを実感し始めています。
2011年4月掲載

ページ上部へ戻る