画像:正重寺

 文禄3(1594)年、根井(ねぬい)正重は自らの名を寺号に冠して、現在の由利本荘市前ノ沢にある正重寺を開創しました。

 正重の祖は、「平家物語」に登場する木曽義仲の家臣で、四天王の一人と称された根井幸親です。木曽義仲が源頼朝に敗れた後、根井氏は藤原秀衡を頼って奥州平泉に落ち延びました。その藤原氏も滅亡してしまうと、さらに今の秋田県へ逃れ、津雲出郷(つくもいずごう)という地名を矢島と変えて領したのです。
由利本荘市直根(ひたね)地域では、見張り場や砦として築かれた「根井館」が、7ヶ所も発見されています。「幸村」で有名な信州真田家は、もともとは根井氏と同根、滋野氏から分かれた一族です。
 
 正重寺には、正重の奥方が所持していた薙刀の刀身や、「京都国際マンガミュージアム」に展示されている「火の鳥」の巨大木像を制作した仏師・須藤光昭さんの彫り物など、貴重な品々が保管されています。
 境内の石碑は昭和28年、寄付金によって建立されたもの。江戸時代からこの地方で敬われている義民・“仁左衛門(にぜん)さま”と、悲劇的な運命を共にすることになった百姓たちとを供養しています。
 
 
平成22(2010)年4月掲載
 
■参考文献
『鳥海町史』
『仁左エ門さまの話』原田明美著

【正重寺アクセス】
●住所:秋田県由利本荘市鳥海町中直根前ノ沢108ー1

こちらの記事もおすすめです

イチイの巨木

 由利本荘市の直根(ひたね)地域を支配した根井氏の城館跡に、力強く立つ一本のイチイ。推定樹齢600年、根回り4.2m、樹高10mにも達するこの巨木は、秋田県の天然記念物に指定されています。  イチイとしては全国的にも有数...

自然・施設

ビューポイント

鳥海山

 秋田県と山形県の県境に位置する「鳥海山」。 東北第2位の標高2236mという高さと、山容が見事な二等辺三角形をしているため、「出羽富士(でわふじ)」とも呼ばれています。   由利本荘市中直根(なかひたね)地域は、標...

自然・施設

ビューポイント

中直根の歴史

  新天地を求めて北に向かう人々は、鳥海山の青さに魅せられ、引き寄せられるのでしょうか。秀峰の歴史は、各地からの来訪者・修験者たちによって彩られています。往来のドラマが、大自然を舞台に繰り広げられてきました。  中直...

歴史

地域の歴史