本文へスキップ

語りを聞く

喫茶店「珈音(かのん)」 佐藤毅さん

画像:喫茶店「珈音(かのん)」 佐藤毅さん

 時間をかけてじっくりとコーヒーを入れる姿が印象的な佐藤毅さんは、男鹿市五里合地域の中でも注目される若手の一人。五里合の琴川地域で喫茶店を営む毅さんは、コントラバス奏者の一面を持ち、県内各地で演奏会を開くなど、控え目で物静かな性格とは対照的に、その活動は多彩です。2010年には、新聞、テレビ、雑誌など、多くのマスメディアで毅さんが取り上げられましたが、本人は自分が目立つことより、志を同じくする仲間との活動を大事にしています。

 2006年に「こおひい工房 珈音」を琴川にオープンし、現在も、口コミでリピーター客を増やしています。昭和14年(1939)の男鹿地震を経たという太い梁が印象的な珈音の室内からは、「先祖代々の受け継がれてきたものを大事にしていきたい」という毅さんの思いが感じられます。

 国道101号線から琴川集落に向かう小道の分岐点にちょこんと立てられた珈音の小さな看板は、周囲の景観を崩さないため。「昔ながらの里山・琴川を残したい」という思いが、毅さんの行動の源です。その象徴ともいえるのが平成22年に始まった「琴川すげ笠伝承塾」です。毅さんが所属する茄子地人協会が主催する琴川すげ笠伝承塾は、一度は途絶えたすげ笠作りを復活させる取り組みが注目され、2010年全国地域青年実践大賞を受賞しています。

 若者が地域の外に流出する時代、毅さんは、逆の人の流れを作ろうとしています。「珈音」も当初は、秋田市に開くことを考えましたが、琴川で生まれ育った毅さんにとっては、やはり琴川の空気が一番合っているようです。また、毅さんには、たとえ田舎町でも良いものさえ作れれば大丈夫という自信がありました。

 やがて、すげ笠伝承塾が終わった後の珈音には、琴川に引かれて訪れた人々が集うようになりました。ふるさとに暮らす幸せをゆっくりと噛みしめてみたくなる。「こおひい工房・珈音」には、コーヒーの甘い匂いとともに、そんな穏やかな時間が流れています。

2011年4月掲載

ページ上部へ戻る