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語りを聞く

なまはげを受け継ぐ青年会 武田進也さん

画像:なまはげを受け継ぐ青年会 武田進也さん


なまはげが教えてくれたこと
 
1年の終わりの大晦日の夜、琴川集落では、鬼の面をかぶり、けらと呼ばれる藁を着た青年たちが家々を練り歩く「なまはげ」行事が今も受け継がれています。大人たちは、なまはげを笑顔で迎え入れますが、子供たちは、みな泣き叫びながら、親の体にしがみつきます。子供にとって彼らが恐ろしい存在なのは、昔も今も変わらないようです。
 
「大人になってもなまはげは怖いんですよ」と、琴川青年会の会長を務める武田進也さんは話します。武田さんは、幼い頃から、なまはげの存在に触れてきました。「お年玉は欲しいけど大晦日のなまはげがあると思うと嫌でしたね」と、今でもその怖さが残っているそうです。武田さんの子供たちも、武田さんがなまはげに扮しているとは知らず、その姿を見た瞬間に泣きだしたといいます。
 
琴川では20~40代の男性で構成される青年会が、長年、なまはげ行事を続けてきています。現在13人が青年会に所属していますが、地元に住むメンバーは武田さんを含め3人。近隣では青年会が無くなり、子供会でなまはげを行う集落も増えてきました。行事の維持が難しくなりつつある現代ですが、「地元にいる私にすれば、仲間が集落に帰ってきたというのは喜びです。なまはげを終えたあと、仲間と一年間の報告をしあう場は残していきたい」と武田さんは話します。
 
行事を通じ、家々を練り歩いていると、どんな家に、どんな人が住んでいるのか、集落の全体像を知ることができるそうです。住宅資材を販売する会社に勤務する武田さんは、地元の消防団にも所属しています。琴川に多い古い家は、いざ災害がおきた時、足の悪い高齢者にとっては逃げやすい造りになっていません。なまはげで得た集落の知識が、消防団が災害時に、いち早く現場にかけつけることに役立ち、また、住宅関係の仕事にも、いいアイディアを与えることがあるそうです。
 
幼い頃はなまはげを迎え入れ、今は各家々を訪れる。この変化を武田さんは一つのステップと考えます。「なまはげのいいところは、他人の子、自分の子に限らず、みんなを指導してくれることです」。なまはげから教えられたことを、今度は自分が子供たちに教えていく、「親父と同じことをやっている。順繰りなんですね」。武田さんの言葉からは、恐ろしい仮面の下に隠れたなまはげの優しい一面が見えてきます。
 
 
2011年11月掲載

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