2月15日(日)、北秋田市・七日市地域の
葛黒(くぞくろ)集落にお邪魔しました。
この日は県内各地で小正月行事が盛んに行われていましたね。
そんな中でも、葛黒集落の「火まつりかまくら」は、ちょっと変わった、
それでいて、とてもスケールが大きな行事なんです。
2編にわたってご紹介します!
「火まつりかまくら」は江戸時代の宝暦年間(1751~1763)から
始まったと伝えられる250年以上の歴史がある小正月行事。
当日に周辺の山から切り出した「ご神木」を人力で立ち上げたあと、
夜に火をつけ「お~い!かまくらの権五郎(ごんごろ)~!」と叫びます。
五穀豊穣・村内安全や悪霊を祓う目的があるそうです。
農作業の機械化で、ご神木に飾り付ける稲藁(いなわら)の確保が難しくなり、
1999年を最後に途絶えていましたが、平成26年に、15年ぶりに復活しました。
テレビなどで見た方も多いのではないでしょうか?
15時頃、葛黒集落に到着しました。
この日はシャトルバスも運行されていましたよ。
会場は立派な雪室のかまくらと、地元小中学生が作ったミニかまくらも登場!
祭りの雰囲気が伝わってきて、わくわくします。
一週間も前から踏み固めた葛黒集落の田んぼには、
大木が横たわっていました。
これが、火まつりかまくらの主役「ご神木」です。
葛黒で昔から使っている木製のソリで、
子供たちが集落から稲藁を集めてきて、ご神木の周囲に運びます。
地元のお父さん達にお話しを聞くと、
集落の山から切り出した「栗」の木は高さ12m、重さは約3トン!
稲藁、豆殻に加え、山ウツギ、杉、笹竹、藤ツルなどを飾りつけています。
様々な植物を飾りつけるのは、点火した際に、
「バチバチ!」や「ドン!」などと派手な音を出すためだそうです。
16時過ぎからご神木の立ち上げ作業がスタートしました!
ご神木を引っ張るロープ組には集落の人たちに加え、
地元の鷹巣南小学校、鷹巣南中学校の児童・生徒、
観光客も交え、総勢200人を超えていました!
全体の指揮をとるのは、葛黒集落の堀部栄一さん。
「まて~! ロープ引っ張らないで!」「まだまだまだ~!」と
全員に指示を送ります。
立ち上げの前半は、ご神木側のメンバーの動きが大事です。
「はさみ」と呼ばれるつっかえ棒のような木を使い、
ご神木が倒れないようにコントロールします。
下から持ち上げると同時に四方に分かれたロープ組が、
ご神木につないだロープを引っ張ります。
「せーの!」「おーいしょ!」という掛け声とともに
ゆっくり、少しづつ立ち上げます。
「せーの!」
今年は昨年より2m長いので、なかなか立ち上がりません~。
「はさみ、効いてらか~?」「ダメだ~効いてね~ぞ~」
……と、はさみの角度も微調整しながらの地道な作業。
「一回(はさみを)抜いて、差し込んで~」
「ロープを立ててください!」
……などなど、このやりとりを何度も繰り返します。
全体を指揮する堀部さんも「そう簡単に立たないのが権五郎です」。
「立ち上げに1時間かかる、大変な綱引き」と話していました。
そして後半はロープ組の力が重要!
「山側に移動してください~」
「今度は川側、力いれてください~! がんばれ~!」
ロープ組は指示に従い、一回引っ張るごとに、
左右に移動しながら立ち位置を微調整して引っ張ります。
なんと、途中でロープが足りなくなり、付け足す場面も!
う~ん、手に汗握るとは、まさにこのこと。力が入る~!!!
立ち上げ開始から40分以上が経過……
ご神木が……
90度の角度に近づいてきましたー!!!!!!
「今、角度82度! ここまでくれば絶対に倒れない!」
「さぁ~も~ちょい、がんばれ~!」
開始して55分!
ついに立ち上がりましたー!!!!!!
日が暮れる前に、無事、立ち上げに成功しました!
みんなで記念撮影♪
ご神木の高さは「元気度」のバロメーターになっていたと
葛黒のお父さんたちは話していました。
地域に元気が無い時はご神木も低くなり、
活気がある時ほど高くなっていったそうです。
「みんなの力が無いと出来ない行事。
みんなで力を合わせてご神木を起こすのが楽しいんだ」
という言葉が印象的でした。
「ご先祖様たちは一度も失敗したことがないし、我々も
失敗した記憶がない」と話す葛黒自治会長の堀部明博さん(写真左)と、
立ち上げを指揮した堀部栄一さん(写真右)。
堀部会長は「この行事は(ご神木の)立ち上げが一番大事。
火をつける所だけ見てもダメ。子供たちには立ち上げに参加して、
この行事を実感してもらいたい」と話していました。
後編に続きます!