「本海獅子舞番楽」をご存じですか?
江戸時代初期、京都醍醐寺の三宝院の修験者「本海行人」が、
鳥海山麓の村々に伝えた「獅子舞」「番楽」のことを「本海獅子舞番楽」と言います。
本海獅子舞番楽は、由利本荘市・鳥海地域の13の団体(講中)が伝承してきており、
平成23年3月9日に国の重要無形民俗文化財に指定されています。
3月11日(日)由利本荘市の文化交流館カダーレで、
「本海獅子舞番楽大競演会」が開催され、
鳥海山麓の村々に伝わる獅子舞と番楽が披露されました!
たくさんの獅子頭が集まりました。
秋田県内には、「本海流」の流れを組む番楽が、数多く伝承されています。
元気ムラでもご紹介してきた、矢島の「坂之下番楽」、
にかほ市の「冬師番楽」「釜ケ台番楽」も本海流の流れを組むと言われています。
演目の共通点や微妙な違いが、村の個性となっていて面白いんです。
今回の大競演会には、
「八木山講中」「下直根講中」「二階講中」「前ノ沢講中」「平根講中」「猿倉講中」の
6つの講中が演目の一部を披露しました。
先日の「ひたね雪ん子まつり」を主催した前ノ沢町内会のように
元気ムラ「中直根」地域に縁のある人々も参加されています。
では、さっそく大競演会の様子をご紹介していきましょう。
●祓い獅子(八木山講中)
獅子に始まり、獅子に終わると言われる「本海流」。
お盆には獅子が集落内を練り歩き「家内安全」「健康祈願」などのお祓いをして
お獅子様に、人間の悪いものを吸い取ってもらいます。
●御神楽(下直根講中)
錫状(しゃくじょう)と扇を持ち、二人が対になる御神楽。
この錫状を持つのも本海流の特徴です。
修験者にちなんだこの道具は、今後の演目にも数多く登場します。
●翁(二階講中)
「静」の「翁」とも言われる演目で、天地長久、延命息災を祈る舞です。
●三番曳(下直根講中)
こちらの舞を披露したのは、地域の中学生だそうです!
観客からもひときわ大きな拍手が上がっていました。
●特別出演・杉沢比山連中(山形県)の「翁」と「猩々」
山形県遊佐町に伝わる「杉沢比山」。
室町時代から伝わると言われる番楽で、
昭和53年に、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
今回、特別出演で、2つの演目を披露してくださいました。
●鳥舞(前ノ沢講中)
代表的な演目「鳥舞」。
雌鳥の鳥兜をかぶって踊る様子は、雌鳥の睦みあう様子を表しているそうです。
この演目でも錫状を持っています。
●夜川善次(平根講中)
ちょっと趣向が代わり、こちらは勇壮な武士舞。
物語が分かりやすい、エンターテイメント性の強い演目です。
●祓い獅子(猿倉講中)
こちらは猿倉講中の「祓い獅子」。
実際に、獅子が村人の悪い部分を吸い取る所作を披露してくれました。
●御神楽(八木山講中)
再び「御神楽」。
こちらは八木山講中の小学生の男の子が舞を披露してくれました。
●鳥舞(平根講中)
平根講中の鳥舞は、雄鳥と雌鳥。
雄鳥は襦袢に袴なのに対し、雌鳥役は女性物の振袖を着ています。
●曽我(前ノ沢講中)
再び武士舞「曽我」。
番楽の中でもメジャーな演目ですね。
五郎と十郎の兄弟による、荒々しい勇壮な舞です。
●もちつき(二階講中)
道化舞とも呼ばれる「もちつき」
悪戦苦闘しながら、餅をつこうとする仕草が、滑稽で「一人もちつき」とも呼ばれています。
最後には観客に餅をサービス!大歓声でした!
●祓い獅子(二階講中)
大競演会を締めるのは、やはり「獅子舞」。
二階講中による「祓い獅子」です。
これら「本海獅子舞番楽」は、それぞれの村で、田植え後のさなぶり、8月のお盆に、
9月の作祭りなど、集落の年中行事の場で演じられています。
これらの講中が一同に会するのが、8月16日の「鳥海獅子まつり」!
今回の6講中だけでも見応え満点なのに、全部揃ったら、もっと面白そうですね~。
伝統芸能には、後継者不足などの課題が深刻ですが、
鳥海地域では、「本海流獅子舞番楽伝承者協議会」を結成し、
後世への伝統継承に取り組んでいます。
みなさんも、ぜひ、一度、本海流獅子舞番楽を「生」で見てみてください!
百聞は一見にしかず。
鳥海地域の昔からの村々の息遣いが伝わってきますよ!
秋田民俗芸能アーカイブスでは、動画も閲覧できますので、ぜひ!!!!!
以上、本海流獅子舞番楽大競演会のリポートでした!