物理:電子レンジの仕組みは?

2011-11-25
 
★質問:【電子レンジの仕組みは?】

[ニックネーム:カズ 小学校4年生]
 電子レンジで入れた物があたたまるのはどういう仕組みですか?


★回答:
 すべてのものは「原子」や「分子」という一億分の 1 cm 程度のとても小さい粒子 (りゅうし) から成りたっています。たとえば,「水」は酸素 ( O ) という原子 1 個と水素 ( H ) という原子 2 個から作られる水分子 (H2O) というたくさん の粒子から成り立っています。

 ものが「あたたかい」(温度が高い) ということは,そのものをなしている原子や分子の運動がはげしい (運動の速さが全体的に大きい) ことを意味し,逆に「冷たい」(温度が低い)ということは原子や分子の運動がゆるやかである (運動の速さが全体的に小さい) ことを意味しています。そして,温度の高いもの (A) と温度の低いもの (B) をあわせると,まずはA の方の原子 (または分子) と B の方の原子 (または分子) がぶつかり合うことによって,次に A (B) の原子や分子同士でぶつかり合うことによって,それぞれのものの原子や分子の運動は,A は全体的にゆるやかに,B は全体的に激しくなるように様子が変わっていき,最終的には同じような運動の状態となります。つまりは,B の方は温度の高い状態となり,あたためられたということになります。ですから,ものをあたためるには何らかの方法でそのものをなす原子や分子の運動を激しくしてやればよいということになります。

 電子レンジのスイッチを入れると,その中では1秒間に約 24億 5 千万回も振動する「マイクロ波」と呼ばれる電磁波 (テレビや携帯電話の電波と同じような波) が発生しています。電子レンジではその中にある食べ物などにこのマイクロ波を吸収させてあたためています。これをもう少し詳しく見ると次のようになります。
 多くの食べ物には水分が含まれていますが,水分子はその端にそれぞれプラスの電気とマイナスの電気をもつ小さな棒のようなもの (電気双極子モーメント) として考えることができます。そのため,多数の水分子からなる集団も大きな電気の棒 (分極) として考えることができます。この分極がマイクロ波をちょうどよく吸収して,電磁波の振動に合わせて回転しようとします。「エネルギー」(注1) という言葉では,電磁波のエネルギーが分極の回転のエネルギーに変化することになります。さらにこのとき続けて,分極の回転エネルギーの一部が次々と1個1個の水分子のばらばらに動く運動のエネルギーに変化していき (これが「熱」の発生です),水分子の運動も激しくなり,結果として,その水分子をもつ食べ物はあたたかくなります。
 水以外のものではこのマイクロ波をよく吸収できないので,それほど温度は上がりません。氷は水が凍ってできたものですが,水分子同士のつながりが強いためなかなか回転できず,マイクロ波の吸収がよくありません。そのため,凍っているものを電子レンジであたためる場合は時間がかかってしまします。

(注1) 「エネルギー」とは他のものを動かすことのできる能力を表しています。その形はいろいろ変わりますが,その全体の量は変わりません。

[回答者:秋田工業高等専門学校 自然科学系准教授 上田学先生]