物理:放射線と放射能の違いは?

2011-11-13
 
★質問:【放射線と放射能の違いは?】

[ニックネーム:シーちゃん 小学校6年生]
 最近ニュースで放射能とか放射線とか聞きますが、放射能と放射線の違いがよくわかりません。違いを教えてください。


★回答:
 「放射線」とは,波長が短くエネルギーの高い光 (注1) や,電子や陽子などのとても小さい粒子が高速で飛んでいるものを言います。ほとんどの粒子は電気を帯びていますが,中性子のように電気を帯びていない粒子もあります。一方,「放射能」とはそのような放射線を出す能力を表しています。「放射能」をもつ物質を「放射性物質」と呼びます。「放射線」と「放射性物質」はよく懐中電灯を例にたとえられており,懐中電灯を点灯して出てくる光が放射線に,懐中電灯そのものが放射性物質に対応しています。そして,懐中電灯に電池が入って点灯できる状態になっていることが,放射能をもつことに対応していると言えるでしょう (補1)。
 すべての物質は原子からできていますが,その原子の中心には陽子と中性子から成る「原子核」というものがあります。放射線は,不安定な原子核が壊れて他の原子核に変わる時に,もしくは原子核は壊れなくてもエネルギーの状態が低い方に変化するときに放出されます。
 放射線を出す能力である放射能の強さは「Bq (ベクレル) 」という単位を用いて表されます。 放射性物質の中で不安定な原子核が1秒間に1個壊れる (すなわち放射線が放出される) とき 1 Bq といい,例えば,1秒間で100個壊れるならば放射能の強さは 100 Bq ということになります。一方,放射線の量は,人体 (またはその器官) にその放射線を当てたときに及ぼす影響の大きさで表し,「Sv (シーベルト)」という単位を用います。例えば,集団検診の胸の X線の放射線の量は1回あたり約 0.000050 Sv です。極端な例となりますが,一度に 5 Sv 以上の放射線を浴びると命に関わります。また,天然にも放射線は存在しており,日本においては1人が通常受けている放射線は一年間に約 0.0015 Sv です。

(注1) 光は「電磁波」という波です。波長とは,波の空間での繰り返しパターンの長さです。また,「エネルギー」とは他のものを動かすことのできる能力を表しています。

(補1) 「放射能」と「放射性物質」は,それぞれ「働き」と「実体」に相当しており,別のものですが,たまに同じように扱われている場合も見うけられます。

[回答者:秋田工業高等専門学校 自然科学系准教授 上田学先生]