ウミガメものがたり

 「出てきた、出てきた」。生まれたばかりの小さな小さな子ガメたちの大きな海原を舞台にした長い旅の始まりです。
 
自然の不思議に出会い、生命をつなぐ物語です。作者は、人気作家の鈴木まもるさん。鳥の巣研究家として多数の作品を描いており、自然へ造詣の深さがこの作品にもあふれています。 
 丁寧に描写された海の生き物たちは表情が愛らしく、カラフルな色彩でそれぞれの個性が豊かに表現されています。
 物語の始まりは、母ガメの一生に一度の産卵からです。静まりかえった砂浜にひれで穴を掘り、卵を産み落として海に戻っていく。丁寧な解説と描き分けられた場面からは温かさと愛情まで伝わってくるようです。 
 子ガメが試練に出会う場面では、思わず感情移入してしまいます。つぶらな瞳の子ガメが、少しずつたくましくなり、いろいろな生き物に出会う場面では、海の恵みを感じられそうです。 
 5cm程で生まれた子ガメは、20年ほどで1m、100kgの立派な海ガメに成長するそうです。そして生まれた砂浜にまた戻ってくる時、新しい生命をつないでいくのでしょう。ぜひ親子でページをめくりながら子ガメたちの旅を応援してください。

 仁村由美子(聖霊女子短期大学付属幼稚園・保育園)

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対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 鈴木 まもる/作・絵
出版社 童心社