ぽとんぽとんは なんのおと

 クマのお母さんと双子の子グマが冬ごもりのため、穴の中で身を寄せ合い過ごしています。
 子グマが尋ねます。「かーんかーんってなんのおと?」。クマのお母さんが答えます。「きこりがきをきるおとでしょう。とおいもりからひびいてくるの。でも、だいじょうぶ。きこりはここまでこないから、ぼうやはゆっくりおやすみね」。
 産まれたばかりの子グマたちは、外の世界を知りません。穴の中に聞こえてくる一つ一つの音が何の音なのか興味津々。子グマの問いかけに、クマのお母さんが丁寧に答える言葉は優しい子守唄のようです。
 タイトルの「ぽとんぽとん」は春の訪れを告げるつららが溶ける音です。凍えそうな冬山や暗い穴の中の場面が続いた後、春の色彩で描かれた野山を、クマの親子が歩き始めます。
 「語りかけ」は、子どもが内容を理解していなくても、親に構ってもらっているという安心感を与え、子どもが伸び伸びと育つために重要だといわれています。絵本のような温かいコミュニケーションで築かれた信頼関係は、新しい世界に踏み出す子どもたちの力になることでしょう。

柴田麻衣子(横手市図書館課)

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対象年齢 3歳ぐらいから
作者名等 神沢 利子/作 平山 英三/絵
出版社 福音館書店