歯がぬけた

 「歯が抜ける!」は時と場合で一大事件になったり、おもしろエピソードがあったり、誰もが必ず体験しているはず。絵本には、乳歯が抜けた男の子のみずみずしい感性と、発見や驚きに共感したりしながら温かく見守る両親の姿がコミカルに描かれています。
 なんといっても表紙が秀逸です。歯が抜けた男の子の口から、口をのぞきこむ両親と先生の驚きの表情が目を引きます。
 絵本では、食卓を囲んでいる時に起こった歯が抜ける瞬間を鮮やかに描いています。男の子は抜けた歯の跡に、コーンをはさんでみたり、ストローをはさんでジュースを飲んでみたり‥。こんなあるあるに笑みがこぼれます。
 ママから乳歯が抜けた時の体験談をしてもらい、下の歯は上に投げるものだと聞きます。でも、男の子の家は団地なので、「どうしよう」と考えます。

 食卓で繰り広げられる家族の会話がとても温かく、ほっこりします。パパの知識やママの小さい時の話に男の子のユーモアが加わり、食卓は笑いに包まれます。お料理はもちろんですが、楽しいおしゃべりも最高のごちそうですよね。

 仁村由美子(聖霊女子短期大学付属幼稚園・保育園)

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対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 中川 ひろたか/作 大島 妙子/絵
出版社 PHP研究所